「ご主人、偶然にもうちの救急に運ばれて来ていたの。会いに行く?」
暗い表情の松浦の言葉に紗雪は泣きながら「会いたいです!」と答えた。
そして、「赤ちゃんも一緒に連れて行っていいですか?」と訊き、松浦は「いいよ。今連れて来るね。」と言うと、病室を退室して行った。
紗雪はまだ信じようとしなかった。
きっと、何かの間違い。
きっと、それは灯也じゃない。
紗雪は松浦に赤ちゃんを連れて来てもらうと、我が子を抱っこし、車椅子に乗って松浦に灯也の元へ連れて行ってもらった。
そして、着いたのは外科病棟の個室。
松浦は「今はまだ個室に安置しているの。」と言い、その個室のドアをゆっくりと開けた。
そして、車椅子に乗った紗雪の目に映ったのは、ベッドに横たわる灯也の姿だった。
「灯也?!」
松浦に車椅子を押してもらい、灯也のそばに行く紗雪。
灯也の顔は傷だらけでまるで眠っているかのようだった。
「灯也?起きて?赤ちゃん生まれたよ?男の子だったの。だから、名前は雪灯でいいよね?」
紗雪の言葉に反応することがない灯也に紗雪は泣きながら必死に話し掛けた。
「灯也、ほら。雪灯だよ?抱っこしてあげて?灯也にそっくりなの。ねぇ、灯也、、、起きてよ、、、」
紗雪は灯也に話し掛けながら、灯也に触れ、手を握りしめた。
しかし、灯也の手に温かさは無かった。
そこで紗雪は、現実を突きつけられた気がした。
そんな紗雪を見て、松浦は静かに涙を流していたのだった。



