自宅に帰って来てからは、紗雪は灯也から離れようとしなかった。
余程怖かったのだろうと紗雪の気持ちを考えた灯也は、優しくいつまでも紗雪に寄り添っていた。
その日の夜、灯也と紗雪はベランダに出て、二人並んで空に浮かぶ月を眺めた。
いつも寂しい時に空を見上げていたと言っていた紗雪。
今は、どんな気持ちで月を見ているのだろう、と灯也は思った。
「なぁ、紗雪。」
「はい。」
「何か、欲しいものはない?」
唐突な灯也の質問に驚く紗雪。
「え、特にありませんよ?今のままで充分です。」
「そう?何でもいいんだよ?今日、怖い思いをさせてしまったから、お詫びってわけでもないけど、何かプレゼントしたくて。」
「あれは、灯也さんのせいじゃないじゃないですか。灯也さんがすぐ迎えに来てくれたので、わたしは安心しましたよ?」
「でも、俺の兄貴なわけだし、、、一瞬でも怖い思いをさせてしまったのは、事実だから。」
灯也が申し訳なさそうにそう言うと、紗雪は少し考えたあと「じゃあ、、、何か灯也さんとお揃いの物が欲しいです。」と答えた。
「お揃いのもの?」
「はい、同じものがあると、灯也さんをそばに感じれるので。」
すると、灯也は紗雪の言葉に少し黙り込み何かを考えていた。
そして、紗雪の方を真っ直ぐ向き、真剣な表情をすると紗雪の両手を゙取り、握り締めた。
「紗雪、、、お揃いのもの、結婚指輪でいい?」
「、、、え?」
「今日、兄さんが来た時、思ったんだ。もし、紗雪に何かあったら、俺は家族じゃないから、紗雪を守れない可能性がある。でも、夫婦になれば何かあった時に関われるし、守れるよなって。」
「灯也さん、、、」
「紗雪、、、俺と家族になってくれませんか?俺と、、、夫婦になってほしい。」
灯也の真っ直ぐな言葉に嬉し涙を流す紗雪。
紗雪は「わたしでいいんですか?」と訊いた。
「俺は、紗雪じゃないと嫌だ。」
紗雪は灯也の言葉に涙を流しながら抱きつくと、「わたしも灯也さんと家族になりたいです。」と答えたのだった。



