次の日の朝、灯也は仕事が休み、紗雪だけ仕事があった為、この日は灯也が玄関先まで紗雪を見送りに行った。
「じゃあ、行ってきます。」
「うん、頑張って。帰りは迎えに行くから、買い物して一緒に帰ろう。」
「はい。」
そう言って、紗雪が玄関のドアを開けようとすると、灯也が「あっ!」と言った。
紗雪は驚き振り返ると、灯也が「忘れもの。」と言い、紗雪に歩み寄ってきた。
そして、首を傾け紗雪の唇にキスをする。
「行ってらっしゃい。」
灯也の突然のキスに驚いたものの、紗雪は朝から幸せを感じ「行ってきます。」と自宅を出て、出勤したのだった。
自宅から徒歩10分先のスーパーは、客層の年齢が幅広く、特に年配の人は朝から買い物に来るため、朝からレジ打ちで大忙しだった。
紗雪は5時間勤務の為、職場の先輩たちと交代で30分休憩を貰える。
女ばかりの職場だが、アットホームで働きやすく、店長も女性で外見は"肝っ玉母さん"のような風貌だった。
「いやぁ、今日も混んだね。」
紗雪がバックルームで休憩を取っていると、店長の蔦野がパソコンで発注の確認をしながら言った。
「そうですね。」
「月柴さん、レジ打ちうちの店が初めてなんだよね?覚えが早くて助かるよ。」
「皆さんのご迷惑にならないように早く仕事を覚えたくて。」
「仕事も早いし、気が利くし、若いのに凄いねぇ。しかも、美人だし。彼氏いるの?」
おばちゃん特有の質問に紗雪は照れながらも「はい。」と答えた。
「やっぱりね〜!こんな美人に彼氏がいないわけないもん!」
「今日、迎えに来てくれることになってるんです。一緒に買い物して帰る予定です。」
「ラブラブだねぇ〜!あたしもそんな時期があったなぁ〜。あ、こんな身体じゃなくて、もっと細い時にね!」
そう言って、店長の蔦野は豪快に笑った。



