灯也は、大きな救急箱とも呼べる薬品などが取り揃えられている小さな部屋に紗雪を連れて行くと、ソファーに座らせた。

「申し訳ありません、、、灯也様の朝食が、、、」

灯也は、手当の準備をしながら「そんなこと気にしなくていい。俺は、朝珈琲だけあれば充分なんだ。それより、月柴さんの傷の手当の方が大事だ。」と言い、消毒とピンセット、ガーゼと包帯を持って来ると、灯也は紗雪の目の前に丸椅子を持って来て座った。

「ほら、手を出して。」

灯也がそう言うと、紗雪は血だらけになった右手を差し出す。

「灯也様にこんなことをさせてしまって、、、申し訳ありません。」
「月柴さん、さっきから謝ってばかりだよ?月柴さん、下の名前は?」

ピンセットで紗雪の手のひらに刺さった破片を取りながら灯也は言った。

「紗雪です。」
「紗雪さん。綺麗な名前ですね。」
「ありがとうございます。灯也様にお褒めいただけて光栄です。」
「別に俺はこの家では偉くない。所詮、次男だからね。"様"付けなんてしなくていいんだよ?」
「そんなわけにはいきません。わたしは神蔵家にお仕えさせて頂いているわけですから。」

灯也は破片を取り終えると、手のひらの傷に消毒をし、ガーゼをあてると包帯で巻き始めた。

「紗雪さんは、何歳?」
「27です。」
「え、歳近いじゃん。俺、29だから2個下だね。」

そう言うと、灯也は「はい、出来た。」と包帯を巻き終えた。

「ありがとうございます。灯也様には、珈琲をお淹れしますね。」
「その手で大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
「じゃあ、お願いしようかな。」

灯也と紗雪は微笑み合うと、部屋を出て、灯也はダイニングルームへ、紗雪は珈琲を淹れる為にキッチンへ向かったのだった。