次の日の朝、灯也が目を覚ました時には、隣に紗雪の姿がなかった。
寝室から出てみると、キッチンに立ち、何かをする紗雪が居て、灯也は近付いて行き「おはよう。」と声を掛けた。
「おはようございます。」
「こんな朝早くから何してるの?」
「灯也さんにお弁当を作っていました。今日からお仕事ですもんね。」
そう言う紗雪の手元を見てみると、お弁当箱におかずを詰めているところだった。
「わざわざ、こんな早くから起きて、ありがとう。」
「いえ、わたしにはこれくらいしか出来ないので。」
そして朝は珈琲だけで充分な灯也は、紗雪の淹れた珈琲に癒されたあと、スーツに着替え、紗雪が作ったお弁当を持ち、初出勤の準備を整えた。
「じゃあ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
紗雪は灯也を玄関でお見送りをすると、家事を始めた。
そして、家事が一段落すると紗雪も仕事探しを開始した。
それから紗雪のパート先が決まったのは、その1週間後だった。
自宅から徒歩10分先にあるスーパーでレジ打ちの仕事をすることになったのだ。
時給は最低賃金、勤務時間は5時間だったが、外の世界で働いてみたかった紗雪は嬉しかった。
「明日から紗雪も仕事が始まるのか。」
「はい。」
「頑張って。家事は無理して全部やる必要はないから。俺も帰って来てから洗濯とか出来るし。」
「はい、ありがとうございます。」



