料理が運ばれて来ると、二人は手を合わせ「いただきます。」と言ってから、それぞれ箸とスプーンを手に持った。
紗雪は、スプーンで炒飯を掬い、ゆっくりと口の中へと運んだ。
そして、幸せを噛み締めるように「美味しい。」と炒飯を味わっていた。
紗雪は、今まで何を食べて生活していたんだろう。
家政婦の食事事情は全く知らない。
きっと、大したものを食べさせてもらっていなかったのではないだろか。
幸せそうに炒飯を食べる紗雪の姿を見て、灯也はそう感じ、心が痛んだ。
紗雪に、もっと楽しさや喜びを感じて欲しい。
灯也はそう思うようになっていた。
「紗雪、回鍋肉も食べてみない?」
「いいんですか?」
「いいよ、ほら。」
「じゃあ、ちょっとだけ。」
そう言って、灯也が渡した箸で肉と一緒にピーマンを掴み、口へと運ぶ紗雪。
「ん、美味しい!」
「良かった。」
「灯也さんも良かったら、炒飯食べてみませんか?」
「じゃあ、一口もらおうかな。」
そう言って、お互いシェアしながらする食事は楽しくて、灯也は紗雪の笑顔が見られた事に喜びを感じていた。
食事も終わり、一通り街の散策が終わると、二人はホテルへと戻った。
灯也はスマホの通知音をオフにしていて気付かぬ振りをしていたが、灯也のスマホの着信履歴やLINEのトークは山積みになっていた。



