すると、紗雪が突然「あ、灯也様って右の手首にホクロがあるんですね。」と言った。
「え?あ、あぁ。そうなんだよ。でも、何で?」
灯也がそう訊くと、紗雪は灯也の包帯を巻き終えた後、自分の左手首を前に出した。
灯也は紗雪の左手首を見て「あっ!」と驚いた。
何と、紗雪の左手首には、灯也の右手首と同じ場所にホクロがあったのだ。
「凄い。自分以外で手首にホクロがある人は初めてだ。しかも、同じ場所に。」
お互いに差し出す手首のホクロを見て、紗雪は「お揃いですね。」と微笑んだ。
「、、、ねぇ、紗雪さん。」
「はい。」
「もし、、、嫌じゃなければ、俺とこの家を出ない?」
「え、でも、、、」
「紗雪さんを助けたい。その気持ちがあるのは確かだ。でも、それだけじゃなくて、、、俺自身も、この神蔵家に疲れたんだ。」
紗雪は、灯也の意外な言葉に驚きながらも、そのまま黙って灯也の話に耳を傾けた。
「父さんは会長という肩書だけで毎日"これも仕事の一つなんだ"とか言って遊び歩いてるし、兄さんはまともに仕事もしないで、面倒なことは全部俺に丸投げ。社内の中で気に入った女性が居れば、すぐに手を出すクズ男だし、、、紗雪さんにまでツライ思いをさせて、、、こんな父親と兄が俺の家族だなんて、、、恥ずかしい。」
「灯也様が、そんなご苦労をされていたなんて知りませんでした、、、。」
「だからさ、この家から逃げたい者同士で一緒に、、、。あ、でも答えは今すぐに出さなくていいからね?」
灯也がそう言った後、紗雪はすぐに「わたし、灯也様について行きます。」と言った。
その表情は真剣そのもので、紗雪から強い意志が感じられたのだった。



