｢柾哉…｣
病院の方から駆けてきた、綺麗な女の人が立っている。
誰？
舌打ちして、今まで見たことのない怖い顔をしている多岐川先生がいた。

｢環ちゃん、また連絡するから…、入ってて｣
また『環ちゃん』に呼び方が戻ってる。
見ちゃいけないような気がしたし、何も聞けない。

急いで２階に上がり窓から外を見た。
待たせていた、一緒に乗ってきたタクシーに二人で乗って行くのを見送った。

嫌でも次の日は朝から仕事。
きっと多岐川先生に会うと思う。
どんな顔で会えば良いのか解らない。

診察前、匠君が小児科にやって来た。
｢環、学会はどうだった？｣
匠君はなにか気付いているんだろうか？
｢レポート、なる早で出すから｣
のぞき込まないで！
｢いや、急がなくても良いんだけど、何かあったら連絡して｣
出て行った。
私、普通に出来たかなぁ。