梅雨も明けて蝉の声が煩わしくなってきた頃、学生たちは少し浮き足立っていた。
期末テストも終わり、もうすぐ夏休み。
私はというと特に誰かと遊ぶ約束もなく、その期間を迎えようとしていた。
「はい、明日から夏休みですが羽目を外しすぎないように。では皆さん、良い夏休みを!」
先生の話が終わり、帰り支度をしながらクラスのみんなは夏休みの予定などで盛り上がっていた。
「ねー、美月は夏休みどっか行くの?」
「うーん、今のところ予定はないかな。なんで?」
「もうすぐ花火大会があるじゃん?それにみんなで行かないかって話をしてて美月もどうかなーって。」
そう誘ってくれたこの子は私と同じ華道部の四宮遙。
毎年花火大会がある日に合わせて夏祭りが行われている。
「花火大会かぁ、どうしようかな…。」
「花火苦手?」
「ううん、好きだよ。…久しぶりに行こうかな。」
「やった!あ、でも男子2人いるんだけど大丈夫…?」
「大丈夫だよ。何、好きな人でも誘ったの?」
「そっ!それは、…。」
からかったつもりがどうやら当ててしまったようだ。
小さく頬を赤らめて言葉を詰まらせる姿は恋する女の子そのものだろう。
「実はね、隣クラスの佐藤くんを誘ったの…そしたらいいよって言ってくれてね…!」
小声で話しているが、その声はとても嬉しそうに弾んでいた。
「そっか、よかったね。」
「うん!」
あまりに嬉しそうだから私も嬉しくなった。
「じゃあとびきり可愛くしてかなくちゃだね。」
「うん!浴衣着ていこうって思ってて、瑠依も着ようよ。」
「いいよ、浴衣着よ。」
「やった!また詳しい時間決まったらLINEするね!」
「はーい。佐藤くんと帰る約束してるんでしょ、ドアの前で待ってるよ。」
「え、あっ!じゃあまたね!」
そう言って足早に向かった。
そんな2人は見ている限り、いい雰囲気なのでは?という感じだ。
「鍵倉ー。」
名前を呼ばれた方向を見ると、すっかり見慣れた姿があった。
「鈴咲くん、今日部活は?」
「しばらく休み、帰ろうぜ。」
「うん。」
そうしていつもより少し軽い荷物を持って教室を出る。
下駄箱で靴を履き替えているとふと朔くんからある質問が飛んできた。
「そういえば、花火大会行くのか?」
「うん、鈴咲くんは?」
「俺も行くよ、佐藤に誘われたし。」
もう1人の男子って鈴咲くんだったのか、と謎が解けた。
「じゃあ当日は私たち4人で見ることになりそうだね。」
「え、じゃあ佐藤が言ってた誘われた女子とその友達って…。」
「遙と私だね。」
誘われたのはついさっきだが、私が断らないと思って2人って言ってたようだ。
全く…、と思いながらも断らなくてよかったと思った自分がいた。
「眩しっ…。」
「ほんとだ…、夏って感じだな。」
「そうだね。」
校舎から出ると、肌がじりじりと焼けるような陽射しと雲ひとつない空が広がっていた。
「空真っ青だなぁ…。」
そう呟いて空を仰いだ朔くんの瑠璃色は陽に翳したビー玉のようにキラキラしていたのを、今でも覚えている。
期末テストも終わり、もうすぐ夏休み。
私はというと特に誰かと遊ぶ約束もなく、その期間を迎えようとしていた。
「はい、明日から夏休みですが羽目を外しすぎないように。では皆さん、良い夏休みを!」
先生の話が終わり、帰り支度をしながらクラスのみんなは夏休みの予定などで盛り上がっていた。
「ねー、美月は夏休みどっか行くの?」
「うーん、今のところ予定はないかな。なんで?」
「もうすぐ花火大会があるじゃん?それにみんなで行かないかって話をしてて美月もどうかなーって。」
そう誘ってくれたこの子は私と同じ華道部の四宮遙。
毎年花火大会がある日に合わせて夏祭りが行われている。
「花火大会かぁ、どうしようかな…。」
「花火苦手?」
「ううん、好きだよ。…久しぶりに行こうかな。」
「やった!あ、でも男子2人いるんだけど大丈夫…?」
「大丈夫だよ。何、好きな人でも誘ったの?」
「そっ!それは、…。」
からかったつもりがどうやら当ててしまったようだ。
小さく頬を赤らめて言葉を詰まらせる姿は恋する女の子そのものだろう。
「実はね、隣クラスの佐藤くんを誘ったの…そしたらいいよって言ってくれてね…!」
小声で話しているが、その声はとても嬉しそうに弾んでいた。
「そっか、よかったね。」
「うん!」
あまりに嬉しそうだから私も嬉しくなった。
「じゃあとびきり可愛くしてかなくちゃだね。」
「うん!浴衣着ていこうって思ってて、瑠依も着ようよ。」
「いいよ、浴衣着よ。」
「やった!また詳しい時間決まったらLINEするね!」
「はーい。佐藤くんと帰る約束してるんでしょ、ドアの前で待ってるよ。」
「え、あっ!じゃあまたね!」
そう言って足早に向かった。
そんな2人は見ている限り、いい雰囲気なのでは?という感じだ。
「鍵倉ー。」
名前を呼ばれた方向を見ると、すっかり見慣れた姿があった。
「鈴咲くん、今日部活は?」
「しばらく休み、帰ろうぜ。」
「うん。」
そうしていつもより少し軽い荷物を持って教室を出る。
下駄箱で靴を履き替えているとふと朔くんからある質問が飛んできた。
「そういえば、花火大会行くのか?」
「うん、鈴咲くんは?」
「俺も行くよ、佐藤に誘われたし。」
もう1人の男子って鈴咲くんだったのか、と謎が解けた。
「じゃあ当日は私たち4人で見ることになりそうだね。」
「え、じゃあ佐藤が言ってた誘われた女子とその友達って…。」
「遙と私だね。」
誘われたのはついさっきだが、私が断らないと思って2人って言ってたようだ。
全く…、と思いながらも断らなくてよかったと思った自分がいた。
「眩しっ…。」
「ほんとだ…、夏って感じだな。」
「そうだね。」
校舎から出ると、肌がじりじりと焼けるような陽射しと雲ひとつない空が広がっていた。
「空真っ青だなぁ…。」
そう呟いて空を仰いだ朔くんの瑠璃色は陽に翳したビー玉のようにキラキラしていたのを、今でも覚えている。
