カツカレーを完食した紗菜は、両手を合わせて元気に「ごちそうさま!」と言った。その後きょろきょろと辺りを見回す。

「まさか近くに白綾君いないよね? 自分の話されるのすごい嫌がる人だからさー。こんなこと話したってバレたらあたし、シメられるかも」
「まさか。女子をシメたりしないでしょ」
「いや、わかんないよ。白綾君は気に入らない奴は性別関係なくボコるってもっぱらの噂だからね!」
「……噂、でしょ?」
「そうだよ。みんな、噂だよ。ああいうよくわかんない人はいろんな噂が立って、そういうのにみんな振り回されるんだよね」

 紗菜は肩をすくめていた。
 結局、そんな噂話をいくつ聞いたってわからないのかもしれない。私は自分の目で見て、話をして、彼という人を判断するしかないのだ。