悲願の全国大会入賞を果たしてから、半年。
今年も、コンクールの季節がやってきた。
「現在の部員は91人。要するに、ほとんどの人がコンクールメンバーから落ちる、ということになります。」
毎年部長から告げられるその言葉は一番重く、深く心を沈ませた。現在の部員は91人、ピアノ伴奏であり副部長の歌音を含めて92人。そして、夏に県予選が行われる全国合唱コンクール、略してJCC。出場可能人数はたった25人。私は、3年生。つまり、これが私のラストチャンスとなる。
「今年は課題曲、自由曲ともに難易度が高いため、この2曲でオーディションを行い、曲ごとにメンバーを入れ変える方針だそうです。ただ、2曲とも上手に歌えていた場合は、2曲ともメンバーに入れる。と、笹野先生がおっしゃっていました。」
笹野先生とは、我らが顧問であり、私たちを5年連続全国大会出場へと導いた、第一人者でもある。
「それじゃ、解散!」
色々考えてたらハルの声が響いた。うちの合唱部は3年生だけで、36人いる。つまり、メンバーが全員3年生で構成されたとしても、10人以上は落選する。ということだ。
「落ちたくないなぁ。」
「よく言うよ!一年からメンバーだったくせに!」
心の声が漏れていたのか、部長、ハルが横から突っ込んできてそんなことを言う。私は小学生のときから歌を習っていたから、それこそ合唱向きの声ではない。ただ、自分で言うのもなのだが、その技量が先生に評価され、一年生の頃からメンバー入りを果たしていた。
「誰かと思ったらハルか、もう、びっくりするじゃ〜ん」
「えへへ、ごめんごめん!」
ハルは部長モードの時は律儀で礼儀正しいのだが、解除されると完全な妹キャラで、学年の垣根を越えて、全員と仲がいい。それが評価されて部長に選出されたのは言うまでもないことなのだが。
「ま、私は絶対メンバー入りするんですけどね。」
歌音の声が響く。
「うわ、感じ悪。」
「ほんとそれな。」
はぁ、とため息が出る。私は彼女が嫌いだ。先生にスカウトされたからこそ、何があってもコンクールに出場できる。(まあ、ピアノ伴奏だから当たり前なんだと思うが。)あまり部活に来なくても、何時間遅刻しても怒られることはない。テストでは学年1位を争う頭脳の持ち主で、しかも、海外のピアノコンクールで優勝したらしい。初めてそれを知った時には「天、バリバリ二物与えてますやん。」と思ったものだ。
「てか、ハル、今年の課題曲聴いた?」
「もちのろんだよ!部長ですからー!」
「もちのろんって、昭和か!」
そんなコントのような会話をしながら、2人で笑い合う。この時間は本当にかけがえのないもので、私の大好きな時間だ。
「先輩、今年の課題曲、さすがにむずすぎませんか?」
後輩たちがそんなことを聴きにきた。私はアルトのパートリーダーをしているため、後輩からの質問をよく受けているのだ。
「いやまじわかる、それな。最初これ見たとき、どーしよまじで、とか思ったもん。」
「いやほんと、それなすぎます。」
今年の課題曲はハッキリ言って、レベチだ。難易度が高すぎる。跳躍が何度も出てくるし、絶妙にリズム難だし。あと私の嫌いなシャープ多いし。
「ま、がんばろ。気合いよ、気合い。気合いさえあればどうにかなるけんさ。」
「それもそうですね!頑張りましょ!」
いえーい、とか言って後輩とグータッチをする。
「やっぱ來未は後輩にモテるねぇ。羨ましい限りだよ〜。」
やれやれ、と言い、首を傾げるハル。
「まあね。」
「調子に乗るな!」
そしてまた笑う。
本当に、この毎日が大好きだ。
今年も、コンクールの季節がやってきた。
「現在の部員は91人。要するに、ほとんどの人がコンクールメンバーから落ちる、ということになります。」
毎年部長から告げられるその言葉は一番重く、深く心を沈ませた。現在の部員は91人、ピアノ伴奏であり副部長の歌音を含めて92人。そして、夏に県予選が行われる全国合唱コンクール、略してJCC。出場可能人数はたった25人。私は、3年生。つまり、これが私のラストチャンスとなる。
「今年は課題曲、自由曲ともに難易度が高いため、この2曲でオーディションを行い、曲ごとにメンバーを入れ変える方針だそうです。ただ、2曲とも上手に歌えていた場合は、2曲ともメンバーに入れる。と、笹野先生がおっしゃっていました。」
笹野先生とは、我らが顧問であり、私たちを5年連続全国大会出場へと導いた、第一人者でもある。
「それじゃ、解散!」
色々考えてたらハルの声が響いた。うちの合唱部は3年生だけで、36人いる。つまり、メンバーが全員3年生で構成されたとしても、10人以上は落選する。ということだ。
「落ちたくないなぁ。」
「よく言うよ!一年からメンバーだったくせに!」
心の声が漏れていたのか、部長、ハルが横から突っ込んできてそんなことを言う。私は小学生のときから歌を習っていたから、それこそ合唱向きの声ではない。ただ、自分で言うのもなのだが、その技量が先生に評価され、一年生の頃からメンバー入りを果たしていた。
「誰かと思ったらハルか、もう、びっくりするじゃ〜ん」
「えへへ、ごめんごめん!」
ハルは部長モードの時は律儀で礼儀正しいのだが、解除されると完全な妹キャラで、学年の垣根を越えて、全員と仲がいい。それが評価されて部長に選出されたのは言うまでもないことなのだが。
「ま、私は絶対メンバー入りするんですけどね。」
歌音の声が響く。
「うわ、感じ悪。」
「ほんとそれな。」
はぁ、とため息が出る。私は彼女が嫌いだ。先生にスカウトされたからこそ、何があってもコンクールに出場できる。(まあ、ピアノ伴奏だから当たり前なんだと思うが。)あまり部活に来なくても、何時間遅刻しても怒られることはない。テストでは学年1位を争う頭脳の持ち主で、しかも、海外のピアノコンクールで優勝したらしい。初めてそれを知った時には「天、バリバリ二物与えてますやん。」と思ったものだ。
「てか、ハル、今年の課題曲聴いた?」
「もちのろんだよ!部長ですからー!」
「もちのろんって、昭和か!」
そんなコントのような会話をしながら、2人で笑い合う。この時間は本当にかけがえのないもので、私の大好きな時間だ。
「先輩、今年の課題曲、さすがにむずすぎませんか?」
後輩たちがそんなことを聴きにきた。私はアルトのパートリーダーをしているため、後輩からの質問をよく受けているのだ。
「いやまじわかる、それな。最初これ見たとき、どーしよまじで、とか思ったもん。」
「いやほんと、それなすぎます。」
今年の課題曲はハッキリ言って、レベチだ。難易度が高すぎる。跳躍が何度も出てくるし、絶妙にリズム難だし。あと私の嫌いなシャープ多いし。
「ま、がんばろ。気合いよ、気合い。気合いさえあればどうにかなるけんさ。」
「それもそうですね!頑張りましょ!」
いえーい、とか言って後輩とグータッチをする。
「やっぱ來未は後輩にモテるねぇ。羨ましい限りだよ〜。」
やれやれ、と言い、首を傾げるハル。
「まあね。」
「調子に乗るな!」
そしてまた笑う。
本当に、この毎日が大好きだ。
