―――広告掲載から数日後。
都内某所某ビル内4階。
その扉の横にかけられた看板はあまりに質素で簡潔だった。
『記事屋』
各階の扉に取り付けられたガラス窓からは中を窺い知ることはできず、
ただ、階段に向かって緩やかな光を投げかけていた。
建築されてさほど年数の経っていないビルの中は静まり返り、
昼間でも室内からの雑音が道行く車の騒音にかき消された。
4階も例外ではない。
「大和(やまと)ー。今日で何日?」
茶髪の青年は安楽椅子に座り、遠い目で外を眺めていた。
「3日ですよ、和也(かずや)。」
調理機器を簡単に備え付けた給湯室兼キッチンに居る黒髪の青年が、優雅にコーヒーを挽きながら答えた。
「そっか…。」
和也と呼ばれた青年は哀愁を漂わせながらため息をついた。
「なんで電話鳴らないんだろ…。」
「さあ、何故でしょうねー。」
大和は微笑みを浮かべながらマグカップに注がれたコーヒーを2つ運んできた。
焙煎したての香りが、部屋中を満たし始める。
「私は暇が好きですので、電話がかかってこなくて幸せですよ。」
そう言って安楽椅子の目の前に設置されたソファーに座り込んだ。
「あ゛ー仕事ほしーい!!」
和也は唸った。
そんなこんなの暇な日々が、2人の日常だった。
都内某所某ビル内4階。
その扉の横にかけられた看板はあまりに質素で簡潔だった。
『記事屋』
各階の扉に取り付けられたガラス窓からは中を窺い知ることはできず、
ただ、階段に向かって緩やかな光を投げかけていた。
建築されてさほど年数の経っていないビルの中は静まり返り、
昼間でも室内からの雑音が道行く車の騒音にかき消された。
4階も例外ではない。
「大和(やまと)ー。今日で何日?」
茶髪の青年は安楽椅子に座り、遠い目で外を眺めていた。
「3日ですよ、和也(かずや)。」
調理機器を簡単に備え付けた給湯室兼キッチンに居る黒髪の青年が、優雅にコーヒーを挽きながら答えた。
「そっか…。」
和也と呼ばれた青年は哀愁を漂わせながらため息をついた。
「なんで電話鳴らないんだろ…。」
「さあ、何故でしょうねー。」
大和は微笑みを浮かべながらマグカップに注がれたコーヒーを2つ運んできた。
焙煎したての香りが、部屋中を満たし始める。
「私は暇が好きですので、電話がかかってこなくて幸せですよ。」
そう言って安楽椅子の目の前に設置されたソファーに座り込んだ。
「あ゛ー仕事ほしーい!!」
和也は唸った。
そんなこんなの暇な日々が、2人の日常だった。