歩くリラ冷えの風


翔真は重たい屋上の扉をゆっくりと閉めると、1段ずつ階段を下りて行った。

そして、3組の前を通り過ぎる時に3組の教室内に視線をやる。

そこに見えたのは、一番窓際の一番後ろの席に座り、頬杖をつきながら窓の外を眺める椿沙の姿だった。

今まで意識したことなかったが、その椿沙の整った綺麗な横顔に一瞬見惚れていた自分に気付く翔真。

幼稚園児の頃から知っていて、椿沙はクールだし、男友達の感覚で接してきたただの幼馴染としか思ったことがなかったが、さっきチャッキーが椿沙の胸元に入り込む瞬間に見たそこそこ膨らみのある肌を見た時、ドキッとした翔真は、椿沙を女性として意識するようになった自分を自覚せざるを得なかった。


そして、その放課後。

帰り支度をしてスクールバッグを肩に掛け、教室を出た翔真は、教室前の廊下で窓側の壁に背をつけて待つ椿沙の姿を見つける。

「ごめん、いつも2組のホームルーム遅くてさ。」
「大丈夫。さっ、行こ。」

そう言って、椿沙と共に翔真が歩き出そうとすると、二人の前に里佳が姿を現し、明らかに不機嫌そうな表情を浮かべながら歩み寄って来た。

里佳は翔真の方を向くと、「本当にわたしをフっちゃっていいの?」と言った。

「はっ?浮気しといて、何言ってんだよ。」

翔真がそう言うと、里佳は「浮気の1回や2回くらい許せる懐の広い男になりなさいよ!」と身勝手なことを言う。

翔真は溜め息をつくと、「何も反省してないみたいだな。それなら、浮気の1回や2回、許してくれる心の広い男を探せばいいんじゃないか?」と言った。

翔真の言葉に納得いかないような表情を浮かべる里佳は、翔真に未練があるようだった。