すると、屋上に冷たい風が流れ込み、翔真が身を縮めて「寒っ。」と呟く。
椿沙は、屋上の扉の前で立ち止まると、クルリと翔真の方に振り返り、「ねぇ、リラ冷えって知ってる?」と言い出した。
「リラ冷え?何それ、初めて聞いた。」
寒さに自分を抱きしめるように腕を組む翔真はそう言うと、立ち上がり椿沙に歩み寄った。
「今時期の冷たい風のことを"リラ冷え"っていうんだって。」
「へぇー、知らなかった。」
「"リラ"ってね、ライラックのことをいうんだけど、花言葉で"友情"とか"思い出"とか"謙虚"とかって意味があるんだよ。」
「随分詳しいんだな。」
「うちのじーちゃんがライラック好きだから。」
椿沙はそう言った後、重たいはずの屋上の扉を軽々と開けた。
「その"リラ冷え"?って、椿沙のことみたいだな。」
「えっ?」
「椿沙が歩くと、空気が変わるってゆうか、、、一見クールに見えるのに、友達想いで曲がったことが嫌い、そして学年トップの成績で運動神経も良いのに謙虚。しかも、いつも着てるカーディガンの色もライラック色だし?」
翔真がそう言うと、椿沙は微かに口角を上げ、「わたしは歩くリラ冷えか。」と言い、屋上の扉を潜り、3階へと下がる階段を下って行った。
すると、椿沙はその途中で足を止め、翔真の方を振り返り「翔、今日ラーメン食べに行こ。」と言った。
「え。俺、金ねーよ。」
「大丈夫。じーちゃんのツケにするから。」
「また光哲さんのツケ?それは悪いって。」
「大丈夫。とにかく、今日はラーメンね。寒いからあったまりたいでしょ?」
椿沙はそう言うと、階段を7段程飛ばし、身軽に着地すると自分の3組の教室へと向かって入って行った。



