歩くリラ冷えの風


光哲が亡くなってから、ノブさんに手伝ってもらいながら、椿沙と翔真、ノブさんの3人だけで葬儀が執り行われた。

椿沙は涙も流さず、最後まで光哲を見送った。

火葬場の外で肩にチャッキーを乗せながら、空を見上げる椿沙。

翔真はそっと椿沙に歩み寄って行くと、「椿沙。」と呼んだ。

すると、ゆっくりと振り返る椿沙は翔真に向かい「ねぇ、翔。泣いてもいい?」と訊いた。

椿沙の言葉に頷く翔真は、優しく「いいよ。」と答えると、椿沙に向かって手を広げた。

椿沙は、ゆっくりと翔真に近付くと、顔を翔真の胸に埋め、静かに泣いた。

椿沙が泣いている姿をこの時、翔真は初めて見た。

翔真は椿沙を抱きしめると、一緒に涙を流し、光哲が灰になり空へ昇っていくのを待ったのだった。


そのあと分かった事だが、光哲は桁が数えられない程の財産を椿沙に遺していた。

そして椿沙は、高校を卒業したら、光哲が陶芸教室として使っていた場所をリフォームし、親が共働きの子どもたちの為の児童館を開くと言った。

「なぁ、椿沙。」
「ん?」
「俺、、、高校卒業したら、働くよ。」
「えっ?でも、翔は進学希望じゃなかった?」
「それは親の希望。俺、進学やめて働く。そして、椿沙のことを養えるように頑張るよ。」

翔真がそう言うと、椿沙は「あれ?その前に言う言葉があるんじゃない?」と言った。

翔真はハッとすると、椿沙と向かい合い、恥ずかしい気持ちをグッと抑え「椿沙、、、俺と付き合ってください。そして、、、俺が立派な男になったら、、、結婚して欲しい。」と言った。

すると、椿沙が笑った。

そして、「その言葉、待ってた。」と言い、翔真に抱きつくと、椿沙の方から短いキスをしたのだ。

翔真は嬉しかった。それから、こう思った。

俺は、君には敵わない。




―END―