「じーちゃん、何で教えてくれなかったんだよ。何で、治療受けなかったの?」
ベッドに横たわる光哲の手を握り締めながら、椿沙は言った。
「わしも、もう88だ。先は永くない。こんな老いぼれに治療費なんかを掛けるくらいなら、お前に残した方が未来の為になる。」
「何言ってんだよ。じーちゃんが居なくなったら、、、わたし一人じゃん。」
「椿沙、、、お前は一人じゃない。お前には、翔真がいるじゃろ。」
椿沙に付き添って来ていた翔真は、光哲の言葉に目を見開いた。
「翔真。」
「はい。」
「椿沙の事、、、よろしく頼むな。この子が心を許してるのは、、、翔真だけなんだ。」
光哲の言葉に椿沙は「じーちゃん、それは言わない約束だったでしょ?」と言った。
「言える時に言っておかないと、伝えられなくなる。翔真、、、椿沙のことを任せられるのは、お前だけだ。」
光哲の言葉に涙を流す翔真。
そして、「はい、、、任せてください。」と涙声で答えた。
「椿沙、、、。」
「なに?」
「お前には、色々と我慢させてきちまったなぁ。悪かった。もうこれ以上、、、強くなる必要はない。今度は、甘えることを覚えなさい。」
「じーちゃん、、、」
「椿沙、、、幸せになれ。」
その言葉を最後に光哲は容態が急変し、危篤状態になった。
そして、次の日の朝、椿沙に手を握り締められながら、静かに息を引き取ったのだった。



