歩くリラ冷えの風


「その時の争いでじーちゃんが帰って来た時には、内山組は全滅。うちの蘭越組で残っていたのは、ノブさんとわたしだけだったの。」
「えっ?ノブさん?」
「そう、ノブさんは元蘭越組だったのよ。」

翔真は、椿沙の言葉でノブさんは"光哲さんの古くからの知り合い"の意味が分かった。

「でも、椿沙、、、よく無事だったな。」
「お父さんとお母さんが命懸けでわたしを守ってくれたみたい。まぁ、病院に運ばれた時には重症で生きるか死ぬかの瀬戸際だったみたいだけど、わたしは今こうして生きてる。背中には大きな傷跡と痣が残ってるけど、わたしはそれはお父さんとお母さんが命懸けで守ってくれた証だと思ってる。」

そう言いながら、椿沙はスクールバッグの隙間からチャッキーを人差し指で撫でた。

「その時にじーちゃんは後悔したんだって。もっと早く、息子の気持ちを優先して、蘭越組を解散させるべきだったって。何でもっと早く、"家族を守ってやれ"って言ってやらなかったんだろうって。」

椿沙のその言葉で翔真は思い出した。

"伝えられる時に伝えないと、伝えられなくなる事もある"

椿沙がそう言っていた言葉は、そうゆうことだったのか、、、
翔真はそう思い、胸が締め付けられるような感覚になり、拳をグッと胸に押し当てた。

「だから、わたしはじーちゃんと二人家族なの。わたしはお父さんとお母さんに守られて生かされてる。だから、わたしは困ってる人が居たら、放っておけないんだぁ。守りたくなっちゃうの。でも、誰かを守る為には強くならなきゃいけない。その為に見様見真似で、じーちゃんから空手の技と強い心を教わったの。」

途轍もなく悲しい話のはずなのに、涙も流さず普段と変わらずに話す椿沙。

そんな椿沙を見て、翔真は泣きそうになった。

自分が壮絶な過去を経験してるはずなのに、困ってる人が誰だろうと、その人を守る為に強くなろうとしてるだなんて、、、

そんな椿沙を守りたい。
翔真は、強くそう思ったのだった。