歩くリラ冷えの風


二人で家路を歩き、先に着いたのは椿沙の家だった。

瓦屋根の昔ながらの平屋だが、若干リフォームしたばかりの為、木造の温かさを感じる旅館のような造りになっていた。

「じゃあ、また明日ね。」
「おう、今日はありがとな。」

そう言って椿沙と別れたあと、翔真はすぐ斜め前にある2階建ての一軒家に入って行った。

「ただいま。」

玄関のドアを開け、中に入ると母親が料理をしているのかスパイシーなカレーの香りが漂ってきた。

その時、翔真は母親に夕飯がいらないことを連絡し忘れていた事に気付き、「やべっ」と小さく呟いた。

リハビリに行くと、翔真の母親が「あら、おかえり〜。」と言いながら、キッチンで夕飯の準備をしていた。

翔真はそんな母に「あのさぁ、、、」と話し掛ける。

すると、翔真の母親はその一言で「もしかして、またラーメンご馳走になってきたの?!」と言った。

母親の言葉に苦笑いを浮かべ、頷く翔真。

翔真の母は溜め息をつくと、「それなら先に連絡してよ。」とムッとした表情で言った。

「ごめん、忘れてた。」
「そんなことよりも、毎回ご馳走になって申し訳ないわよ。こないだ、光哲さんのとこに行って、お金払おうとしたんだけど、受け取ってもらえなかったの。」

そう言いながら、鍋の中のカレーをかき混ぜる翔真の母。

翔真は「店でも、お代はいらないって言われるんだよ。」と言いながら、ソファーに身を投げるようにドンと座った。