歩くリラ冷えの風


1階の玄関まで下りて行くと、靴箱からローファーを出しながら「女って面倒くさいね。」と椿沙が言った。

「いや、お前も女だろ。」

翔真の突っ込みに「あ、そっか。」と思い出したように言う椿沙。

「でもさ、試したくなる気持ちも分かるなぁ。」
「えっ?」
「翔、あんまり好きとか口に出さないタイプでしょ?」

図星をつかれ、何も言えないで居ると、椿沙は「女って、不安になる生き物なんだよ。」と言った。

「何だよ、じゃあ、椿沙は里佳の味方ってことかよ。」
「そうは言ってない。浮気はいけないことだから。」
「だろ?」
「でも、気持ちを伝えるって大事なことだと思う。」

そう言って、椿沙はローファーに履き替え、上靴を靴箱に入れると、「人はいつどうなるか分からない。だから、伝えられる時に伝えないと、伝えられなくなる事だってある。」と意味深な言葉を溢すと、「さぁ、ラーメンラーメン。」と言って、椿沙は歩き出した。

「伝えられる時に伝えないと、伝えられなくなる事がある、、、かぁ。」

翔真はそう呟くと、急いでスニーカーに履き替え、椿沙のあとを追った。

いつも椿沙が翔真を連れて行くラーメン屋は、椿沙の祖父である光哲の古くからの仲間が営むラーメン屋だった。

学校から自宅に帰宅する途中にあり、椿沙は小さい頃からお世話になっているラーメン屋なのだ。