電話を切ったあと、また泣いてしまった。
正確にいえば、すでに泣いていたと思う。

最後の一言で、私の心は大きく揺れた。

こんなヒドイ私でも、あんなに想ってくれていたなんて。

私はバカだ。
本当にバカだ。

番号を聞けば、きっと自分に負けてしまう。
彼に甘えてしまう。
自分のしたことを忘れて、彼の元へ走ってしまいそうな自分が怖かった。

だから、わざとメモすることをやめて聞こえないように覚えないようにって。

なのに。

同じ気持ちなのに。
なんで私はこんな風にしか出来ないんだ。

今さら気づいた。
私は、彼の精一杯の気持ちを踏みにじった。
歩み寄ろうと彼はしてくれていたのに。

慌てて受話器を耳に当ててももう遅い。
彼が言った番号を必死で思い出そうとボタンに指をおく。
だけど、その指は何度やっても090までしか押すことが出来なかった。

そうなるようにしたんだから仕方がない。

彼へ私の想いを伝えることは、もう出来なくなってしまった。

きっともう彼から連絡が来ることはないのだろう。
彼は私に委ねたのだから。

耳に響く無機質に規則正しく繰り返す電子音が余計に悲しくさせた。


これが18歳の冬から初夏のことだった。