みんなをドアで見送っていると、マコトが最後にドアを出る時に、ちょっと考えて私に話しかけた。


「なぁ、アカリ。ヒントやるよ。」

「ヒント?」


もしかしたら、前に話したときにマコトが気づいたケンジさんの事だろうか。
あの時は教えてくれなかったことを思い出す。


「アカリさ、この6年をよく振り返ってみろよ。
お前を『作って』きたのは誰だと思う?」

「作って?なにそれ?
どうせなら、もっと分かりやすいヒント頂戴よ。」

「バカ。それじゃ意味ないだろ。
なんでお前、そんなに悩んでんだよ。よく考えてみろ。」


だって、全然意味がわからない。

腑に落ちない私に「じゃ、頑張れよ」と片手を上げて去るマコトを不満気に見送る私。
皆が居なくなったお店はとても静かで、何となく少し寒く感じた。
窓のブラインドをシャーっとおろしていく。

ケンジさんの今の状況と何が関係あるのだろう。
まるきりケンジさんと関係ないことは誰だってわかるのに。
でも、引っかかるのは6年っていうところ。
それはケンジさんと一緒に仕事するようになってから今までの期間。
確かにこの6年間、ケンジさんと過ごし年を重ねて来た。
だからと言って、マコトの言っている意味が分からなかった。

最後に残ったカウンター横の窓は、外が見えるようにそのままにして椅子へ腰かけた。

もやもやしたまま時間が過ぎる。

今ケンジさん、どうしてるかな。
大丈夫かな。

カウンターにダラりと体を預けた。
ひんやりと冷たい木製の大きなカウンター。
これはケンジさんがデザインし手作りしたもの。
弟と友達の大工さんに協力してもらったと言っていた。

これを見た時は、売り物の様にきれいな出来映えに驚いたんだ。
とてもオシャレで、綺麗な木目。
一目で気に入った私はずっとこのカウンターを大切にしてきた。

カウンターから体を起こし両手をピタッと乗せ目を閉じ思い出す。


これを最初に見た日のこと。