辛い事もぶっ飛ばすようなケンジさんのいつもの豪快な笑顔。
内側から湧き出る強さに皆がケンジさんを慕う。
それが、ケンジさんの魅力。
そんなケンジさんに数えきれないほど救われているのは私だけじゃない。
だけど、今度は私がケンジさんを助けたい。
ただのちょっとしたケンカなわけない。


「私も行きます。」

「は?行くって?」

「彼女さんのところに。」

「……はい?!」

「大丈夫です。口は出しません。
ケンジさんにこれ以上ケガが増えないように、私がケンジさんを守ります。」


私が首を突っ込んでいいわけないのは分かってる。
でも、そう口が動いてしまった。
「私が守る」なんて、ケンジさんのプライドを傷付けてしまったかもしれない。
それでも、こんな状態のままのケンジさんを黙ってみてられし、放って置くなんて嫌だった。
断られるのは分かってても、言わずにいられなかった。

ケンジさんの様に、黙って見守ることの出来ない弱い私。
堪えようにも涙がポロポロとこぼれる。
私が泣いてどうする。
分かっていてもやっぱり涙が止まらない。

ケンジさんがそんな私をジッと見ている。
バカな事を言ってるのは分かってる。
だけど、私は本気でそうしたいと思ってる。
私も真っ直ぐケンジさんを見た。

すごく長い時間に感じるも、きっと数秒。
なにも言わないケンジさんを見ていると、だんだん余計なお世話をしている自分が恥ずかしくなる。
助けになりたいと強い意思を持つ自分と、ケンジさんから目を背けてしまいそうな自分。
やっぱり、ケンジさんを助けたいと強く思う。


「お前は待ってろ。
絶対、今日終わらせるから。」


力強く真っ直ぐに私へ告げた。


「…はい。」


そうとしか返事するしかなかった。
当たり前だ。
他人、なんだから。
他人…か…。

自分で思ったくせに、ズキッと胸が痛む。


「ほら、お前が行くと浮気だと思って余計こじれるだろ?」


下を向いた私に少しふざけたように言った。


「わかりました。
すいません、変な事いっちゃって。」

「そんなことねーよ。ありがとな!アカリ!」


そして、ケンジさんは笑ってフロアへでた。

時計をみると部屋に入ってほんの15分たっただけ。
皆がそろそろ出勤してくる。
涙を拭いてメイクをサッと直し私もフロアへ出た。