マコトと話してみたものの、なんの手立てもない。
出るのはため息だけ。

そもそも私達が介入していい問題ではない事も分かっているし、ケンジさんも私達を巻き込みたくはないんだろうと思う。
だけど、いくら小さくても傷を増やしていくケンジさんを見ているのは辛い。
仕事中はいつも通り笑ってるケンジさんをみていると、余計に心配になる。


「どうしてあんな事になっちゃったんだろう。」


本当にどうしてなんだろう。
どうしても信じられなかった。


「ハッキリわかんねぇけどさ、ケンジさんにも考えあっての事だろ。
ケジメつけるために、毎日のようにちゃんと向き合ってるんだろ。きっと。」

「マコト、心当りあるの?」


ハッキリ分からないけどって言ったことに引っ掛かった。
私が見たことを話した時も特に驚くわけでもなかった。
勘のいいマコトの事だから確信に近い心当りはあるんだと思った。


「心当りって言うか、少し俺が思っただけ。」

「なに?教えて!」

「ダメ。もし、これが正解ならそのうち分かる。
それに勝手なこと言えねーだろ。」


そう言ってアツシのところに戻ってしまった。
結局なにもわからなかった。
心配するばかりで何も出来ない自分がもどかしかった。

しばらくして練習をやめて帰る事になり、時間が遅いからとマコトが車で送ってくれることになった。


「ごめんね。ありがと。」

「お前に何かあったら俺がケンジさんに怒られんの!ほら、乗れ。」


マコトは何だかんだ優しい。
そんなこと言いながらも、助手席のドアを開けてくれる。


「あ、私後ろに乗る。」

「そっか?気にしなくていいのに。お前なら。」


助手席は彼女の席。
いくら友達でも他の女が座るのは嫌だろう。

マコトの彼女は私の高校の同級生のミオ。
助手席にはミオの膝掛け。
髪の毛一本でも落とそうものなら疑いもかかるし、よけいな心配はかけないようにしたい。


「最近ミオに会ってないなぁ。元気?」

「あぁ。ミオも同じ事言ってたぞ。」

「上手くいってんだね?それは、安心。」

「まぁな。お陰さんで。」

「なんか素直で気持ち悪い!アハハハ!」


私の笑い声から少し間を置いてマコトが話し始めた。


「なぁ、気になってたんだけどよ。」

「なに?」

「お前、ケイスケとどうなってんの?
より戻すとかあり得んの?」

「えっ?!な、なんで?!」