お店を出てサロンに向かって歩き始めると、
「相変わらずイケメン~!みたいな?」
「えっ!?」
「ジッと顔見られると照れちゃう!ギャハハ!」
「ちがっ!全っ然違うし!!
なんか大人なんだなって思っただけだし!!!」
「まぁ、7年も経てば多少はね。」
慌てる私をからかうように笑みを浮かべるケイスケ。
横顔をつい眺めてしまっていたのを気付かれていたようだ。
みんなと一緒の時とは違う。
今日のケイスケはちょっと意地悪かもしれない。
少し意地悪するところは昔のままだ。
そんなケイスケに少しだけ動揺しながら歩いた。
もうすぐお店に着くが、ケイスケはこのままお店で待つようだ。
コンビニに差し掛かり、この角を曲がる。
このコンビニの裏手にお店があり、曲がると先ずお店の駐車場が目にはいる。
お店の駐車場は店の前の道路を挟んで向かいにあり、ケンジさんの黒いジープがとまっているのが見えた。
「あっ、もうケンジさん来てる。」
「ん?あの人は?」
立ち止まり、良く見ると車の陰にはケンジさんと彼女さんがいた。
「あ~、彼女さんだ。
どうしたんだろう?開店前に来るなんて珍し~。」
歩き出そうとした私の腕をケイスケが掴み、コンビニの陰に引っ張られた。
「え?!なに?!」
びっくりして少し大きな声をだした私に、ケイスケは人差し指を立てて言った。
「しっ!!見てみ。様子変じゃないか?
なんか、泣いてない?彼女さん。」
「泣いて?!うそっ!?」
コソコソ声でそう会話しながら、陰からそっと様子を盗み見ると、
「…本当だ。確かに泣いてるように見える…。」
ケンジさんの腕を掴み、泣きながら必死に何か言ってる。
何となく声は聴こえるような気はするけど、内容まではわからない。
ただならぬ雰囲気に近寄りがたい。
「今行くのは…」
「マズイな。」
どうしようか考えながら、再び二人の様子を伺っていたその時だ。
手を大きく振りかぶる彼女さんにハッとした瞬間、バチンと音がした。
時間を気にしているのか、チラッと腕時計をケンジさんが見た瞬間だった。
彼女がケンジさんへみるからに強烈なビンタをした。
ここまで音が聞こえるほどとは、尋常じゃない。
とっさに陰に隠れ、目がテンになる私達。
「…み、見た?」
「ビンタ…したよな…?なかなか強烈なやつ…。」
またそっと覗くと、彼女がこっちへ走ってくる。
私達は急いでコンビニの陰に隠れようと後ろへ下がたが、角から彼女が飛び出してきた。
「うわっ!」
「あっ!」
「ッ!!」
私はケンジさんの彼女とぶつかってしまった。
「す、すみません!
あ、…アカリちゃん…。」
「あ…、どうも…。」
よろめきながらも、驚いた顔で謝る彼女の顔はやっぱり涙で濡れていた。
私だと分かった彼女はすぐに気まずそうに表情を歪めた。
とっさに体を庇った手の甲に、ヒリヒリと違和感を感じる。
手の甲を見ると引っ掻いたような傷。結構しっかりとした傷からは血が滲んでいた。
それを見た彼女が、ごめん!と謝る。
何事も無かったように、大丈夫ですよと私が笑顔で答え目が合うと、彼女は慌てて涙を拭った。
長くキレイにストーンやラメで飾られたネイル。
涙を拭ったその右手の薬指のネイルが折れていた。
私にぶつかって折れたのだろうか。
彼女はまた「ごめん」と言って走り去ってしまった。
角からそっとお店の方を覗くと、ケンジさんの姿はなかった。
「…とりあえず、行かなきゃ。」
「あ、あぁ。大丈夫?手?」
「大丈夫!大丈夫!でも、ナイショね。」
「あぁ。」
私達はいつも通り、お店に入ることにした。
「「おはようございまーす!」」
カウンターで頬杖をついてパソコンに向かうケンジさんは、伏せていた顔を少しだけあげた。
「おっ、アカリか。今日も頼むな。
あれ?!ケイスケも一緒か?!早いな!」
声はいつも通りのケンジさんだ。
「もしかして、お前ら一緒に来たの?」
「休みなんでアカリと朝飯食って来ました!」
「なに~!?お触り禁止っつったろ!」
「変なことはしてないっす!」
「うっ!だ、大丈夫!ない!ないですからケンジさん!」
「本当だな!?ったく、油断も隙もねぇ!」
そんな事を言いながら、またパソコンに向かうケンジさんは本当にいつも通りだ。
さっきの出来事を全然感じさせないくらい。
だけど、今一瞬離れた頬杖の下にの左頬は、赤くなっていた。
私の手の甲の傷と同じように、引っ掻いたような傷に血が滲んでいたのが見えた。
たぶん、引っ掻き傷はネイルが引っかかっただろう。
彼女さんのネイルはケンジさんをビンタした時に折れたのだろうか。
そんな強い力で叩くなんて、どれだけの事が起きていたのだろう。
私はこの傷ついた手の甲を見られないようにポケットに突っ込んで奥の部屋に行き、絆創膏で傷を隠した。
ふと、ケイスケと再会した日の夜に見たケンジさんの左頬の絆創膏を思い出した。
もしかしたら、あれも…?
あの絆創膏と似たような場所の頬の傷。
そして、ケンジさんのため息。
ただのケンカじゃない事はわかる。
おそらく、別れ話。
何も知らないのに妙に確信があって、それしかない気がした。
「相変わらずイケメン~!みたいな?」
「えっ!?」
「ジッと顔見られると照れちゃう!ギャハハ!」
「ちがっ!全っ然違うし!!
なんか大人なんだなって思っただけだし!!!」
「まぁ、7年も経てば多少はね。」
慌てる私をからかうように笑みを浮かべるケイスケ。
横顔をつい眺めてしまっていたのを気付かれていたようだ。
みんなと一緒の時とは違う。
今日のケイスケはちょっと意地悪かもしれない。
少し意地悪するところは昔のままだ。
そんなケイスケに少しだけ動揺しながら歩いた。
もうすぐお店に着くが、ケイスケはこのままお店で待つようだ。
コンビニに差し掛かり、この角を曲がる。
このコンビニの裏手にお店があり、曲がると先ずお店の駐車場が目にはいる。
お店の駐車場は店の前の道路を挟んで向かいにあり、ケンジさんの黒いジープがとまっているのが見えた。
「あっ、もうケンジさん来てる。」
「ん?あの人は?」
立ち止まり、良く見ると車の陰にはケンジさんと彼女さんがいた。
「あ~、彼女さんだ。
どうしたんだろう?開店前に来るなんて珍し~。」
歩き出そうとした私の腕をケイスケが掴み、コンビニの陰に引っ張られた。
「え?!なに?!」
びっくりして少し大きな声をだした私に、ケイスケは人差し指を立てて言った。
「しっ!!見てみ。様子変じゃないか?
なんか、泣いてない?彼女さん。」
「泣いて?!うそっ!?」
コソコソ声でそう会話しながら、陰からそっと様子を盗み見ると、
「…本当だ。確かに泣いてるように見える…。」
ケンジさんの腕を掴み、泣きながら必死に何か言ってる。
何となく声は聴こえるような気はするけど、内容まではわからない。
ただならぬ雰囲気に近寄りがたい。
「今行くのは…」
「マズイな。」
どうしようか考えながら、再び二人の様子を伺っていたその時だ。
手を大きく振りかぶる彼女さんにハッとした瞬間、バチンと音がした。
時間を気にしているのか、チラッと腕時計をケンジさんが見た瞬間だった。
彼女がケンジさんへみるからに強烈なビンタをした。
ここまで音が聞こえるほどとは、尋常じゃない。
とっさに陰に隠れ、目がテンになる私達。
「…み、見た?」
「ビンタ…したよな…?なかなか強烈なやつ…。」
またそっと覗くと、彼女がこっちへ走ってくる。
私達は急いでコンビニの陰に隠れようと後ろへ下がたが、角から彼女が飛び出してきた。
「うわっ!」
「あっ!」
「ッ!!」
私はケンジさんの彼女とぶつかってしまった。
「す、すみません!
あ、…アカリちゃん…。」
「あ…、どうも…。」
よろめきながらも、驚いた顔で謝る彼女の顔はやっぱり涙で濡れていた。
私だと分かった彼女はすぐに気まずそうに表情を歪めた。
とっさに体を庇った手の甲に、ヒリヒリと違和感を感じる。
手の甲を見ると引っ掻いたような傷。結構しっかりとした傷からは血が滲んでいた。
それを見た彼女が、ごめん!と謝る。
何事も無かったように、大丈夫ですよと私が笑顔で答え目が合うと、彼女は慌てて涙を拭った。
長くキレイにストーンやラメで飾られたネイル。
涙を拭ったその右手の薬指のネイルが折れていた。
私にぶつかって折れたのだろうか。
彼女はまた「ごめん」と言って走り去ってしまった。
角からそっとお店の方を覗くと、ケンジさんの姿はなかった。
「…とりあえず、行かなきゃ。」
「あ、あぁ。大丈夫?手?」
「大丈夫!大丈夫!でも、ナイショね。」
「あぁ。」
私達はいつも通り、お店に入ることにした。
「「おはようございまーす!」」
カウンターで頬杖をついてパソコンに向かうケンジさんは、伏せていた顔を少しだけあげた。
「おっ、アカリか。今日も頼むな。
あれ?!ケイスケも一緒か?!早いな!」
声はいつも通りのケンジさんだ。
「もしかして、お前ら一緒に来たの?」
「休みなんでアカリと朝飯食って来ました!」
「なに~!?お触り禁止っつったろ!」
「変なことはしてないっす!」
「うっ!だ、大丈夫!ない!ないですからケンジさん!」
「本当だな!?ったく、油断も隙もねぇ!」
そんな事を言いながら、またパソコンに向かうケンジさんは本当にいつも通りだ。
さっきの出来事を全然感じさせないくらい。
だけど、今一瞬離れた頬杖の下にの左頬は、赤くなっていた。
私の手の甲の傷と同じように、引っ掻いたような傷に血が滲んでいたのが見えた。
たぶん、引っ掻き傷はネイルが引っかかっただろう。
彼女さんのネイルはケンジさんをビンタした時に折れたのだろうか。
そんな強い力で叩くなんて、どれだけの事が起きていたのだろう。
私はこの傷ついた手の甲を見られないようにポケットに突っ込んで奥の部屋に行き、絆創膏で傷を隠した。
ふと、ケイスケと再会した日の夜に見たケンジさんの左頬の絆創膏を思い出した。
もしかしたら、あれも…?
あの絆創膏と似たような場所の頬の傷。
そして、ケンジさんのため息。
ただのケンカじゃない事はわかる。
おそらく、別れ話。
何も知らないのに妙に確信があって、それしかない気がした。
