なにを突然怒り出すことがあるのか、とにかくケンジさんを落ち着かせないと話にならないようだ。


「ケンジさん、落ちついて…!」

「アカリは黙ってろ!
おい、ケイスケ!もういっぺん言ってみろっつてんだよ!」


ダメだ。完全に何か勘違いしてる。
ケイスケは理解できないようで明らかに困惑している。


「もうダメだ…。リョウさん。…お願いします。」

「え~~…。面倒くさ~…」


うんざりしながらもリョウタロウさんが席を立ち、ケンジさんを背中から羽交い締めにした。


「あー、もう!ほら!ケンジ!
落ち着け!!とりあえず、よく聞けって!!」


キレたケンジさんをリョウタロウさんが力ずくでケイスケから引きはがしたが、ケンジさんはそれでもまだ興奮していて全く聞く耳をもたない。


「離せよ!
こいつ!!お触り無しつったろーが!」

「はい?!」


何を勝手に思い込んでいるのか、話が飛躍しすぎている。
掴みかかられたケイスケもあまりのケンジさんの勘違いぶりにポカンとしているようだ。
ケンジさんの頭の中を見てみたいと心から思った。


「ハァ~、もう…。
ケンジさん、ちゃんと聞いてましたか?」

「何が!?」


私は不満気なケンジさんの目の前に行く。


「いいですか?
友達。友達なんです。」

「友達ってなんだよ!」


この人は、友達の意味すらわからなくなってしまったのだろうか。
見かねたマコトがまくし立てるようにケンジさんに説明した。


「ケンジさん勘違してんですって。
こいつらは今友達になって帰ってきたの!
アカリはケイスケを友達として紹介しようとしただけ!
だから、お触りもないの!」


ようやく理解したのか、みるみる怒りの表情から気まずそうに表情を曇らせた。
ケイスケを掴んでいた手もゆっくり離れ、ケイスケはようやく解放された。


「…そうなの?」


私の顔を見て聞くケンジさん。


「はい。」

「なんだ!早く言えよ!ハッハッハ~……。
……ふ~ん。」


ケイスケと付き合う事にしたと勘違いしたケンジさんは、やっと理解したみたいだけど何となく納得してないような表情。


「ケンジさん!子供じゃねぇんだから!」


マコトがケンジさんを促す。


「…。あっ、ケイスケ悪かったな。」


子供みたいにふて腐れながら謝った。
ケイスケは少しも怒る事なく、ニッコリ笑った。

ケンジさんはそっぽ向きながらケイスケに右手を出した。


「まぁ、そういうことならな。よろしくな。」

「こ、こちらこそ!心配かけてすみません。」


ケンジさんとケイスケの手がしっかり繋がった。
ケイスケが謝ることなんて少しもないのに、すみませんだなんて謝らせてしまった。
私の方がみんなを振り回してしまったようで罪悪感がある。
でも、みんなもケンジさんの態度に呆れながらも、笑顔でケイスケを受け入れてくれた。

1人ずつ握手をしていくケイスケの手を、格別な笑顔で離そうとしないヤヨイさんにケイスケは苦笑いしていた。