後悔

多分今ので理解したケンジさんは、マコトに｢手出すなよ｣と言って、マスターが出してくれたマイヤーズを一口飲んだ。

私はケイスケに正面から向き合い頭を下げた。


｢あの…。あの時は、ごめんなさい。
許して貰おうなんて思ってない。
…本当にごめんなさい。｣

｢当たり前だ！許すわけねーだろ！｣


またタツヤが横やりをいれる。

私は頭を下げたまま目をギュッとつぶってタツヤの言葉を受けとめる。

マコトが、｢また、テメェは！｣と言うのと同時に、ケイスケも｢違うんだって！タツヤ！｣と言ったが、タツヤは構わず続ける。


｢大体お前みたいなっ…！｣


ガン！！と、タツヤが言い切る前に大きな音がした。


その音に驚いて顔をあげた。

ケンジさんが、グラスをカウンターに叩きつけた音だ。
カウンターに飛び散ったお酒がライトに反射してきらりと光る。

静かにケンジさんはタツヤに向かって言った。


｢随分言ってくれるな。
それ以上、アカリの事言ってみろよ。｣


声を荒げたわけではない。
無表情で低く響くような声は今までに見たことも聞いたこともない。
私達までビクッとなるような迫力があった。
その迫力にタツヤは黙ってうつむいた。