内心とても動揺していた。
バクバク言ってる鼓動を感じながらドアに向かい早足に歩いた。

カウンター席の横に差し掛かるとマスターに呼び止められた。


「アカリ!今ケンジから電話あったよ。もうすぐ来るんじゃないかな。」

「本当ですか!ありがとうございます!」


私はマスターと向き合い言葉をかわす。


「アカリ……?」

「え?」


突然横から名前を呼ばれ顔を向けた。
ガタンとカウンター席から立ち上がり、こっちを向いている人と目があってしまった。
私は再び起こった出来事に呆然と立ちすくみ、賑やかなまわりの音も聞こえなくなっていた。

時間が止まったみたいに。


「ケイ…スケ…。」


昼間の店での映像が頭を過ぎる。
まさか、今日だけで二度もこんな偶然があるなんて…。

その時、カランカランとドアのベルが鳴った。
そして、同時に聞こえた声に我にかえる。


「マスター!いつものちょうだい!」

「…ケ、ケンジさん…!」


ケンジさんが立ち止まった。


「おっ、アカリそんなとこで何してんだよ。
っつーか、マコトも何してんだ?
お前らわざわざ俺のお出迎えか?ハッハッハッ!」


マコト?
振り返るとマコトがいた。


「…ケンジさん、遅せーからわざわざ見にきてあげたんすよ。」


マコトが冗談めかして言った。


「そっか!悪かったな!」


陽気に謝るケンジさん。



「…行くぞ、アカリ。ケンジさん来たし。」


マコトは私の腕を引き、微かにケイスケに頭を下げた。


「まっ、待って!アカリ!」