どうしても落ちつかなくて、少しでも早く行きたくて、いつもよりも急いで片付けをした。
私だけがそわそわしていて、いつもならマコト達に置いていかれ気味な歩く早さも今日はついて行ける。

いつものお店にみんなで入るなり、真っ先にいつもの席を見たけど、ケンジさんはまだ来ていなかった。
あとで来るって分かっても、今居ないことに肩を落とした。

お店の奥にある大きい楕円型のテーブル席が私達のいつもの席だ。
メニューを囲み、それぞれ注文を済ませる。


「アカリさん。」


アツシに呼ばれ、ちょっとドキッとした。


「ん?」


私は意識してごく普通を装い返事をした。



「今日、俺が連れてきたモデルさんと知り合いですか?」


やっぱりその事か。


「うそ!アカリ、あの超絶イケメン知ってるの!?」


私が返事するよりも先にヤヨイさんが言った。
急にテンションが最高潮だが、ケイスケだと知ったらどんな反応になるんだろう。


「…まぁ。はい。」


前にここで号泣して話をした時の彼だとは、ちょっと言いにくい。


「会いたくなかった相手って感じに見えたけど?
何か、お前あのモデルの来店以降おかしかったし。」


あぁ、マコトは気づいてたんだ。
勘のいいマコトはケイスケかもと思っているかもしれない。

会いたくなかった相手…。
確かに今はまだ会いたくなかったかもしれない。
あんなに前は会いたくて仕方なかったケイスケなのに。

ケンジさんに打ち明けてから2ヶ月。
本当に吹っ切れて、ケイスケが好きと言う想いはなかった。
でも、まだやっと落ち着いたばかりの心にこの衝撃はなかなかだった。


「…ケイスケ、あの人。」


みんなが驚く。
マコトはやっぱり予想通りって感じだ。


「マ、マジっすか?!
す、すいません!オレ…!」

「アツシが謝ることないってば!」


ヤヨイさんは絶句している。
リョウタロウさんは、「こんなことってあるんだね~」と感慨深気に言った。


「ちょっとビックリして動揺しちゃったけど、でももう大丈夫だよ!」


心配かけたくなくて笑ってみせた。


「ケンジさん、遅いねー。
ちょっと外見てくるよ!」


そう明るく振る舞い、私は席をたった。