後悔

深くひと呼吸して、私はみんなに向かって言った。


｢みんな、ごめんなさい。
こんな私だけど、これからもよろしくお願いします。｣


一人一人の顔をみながら精一杯心を込めて言った。

マコトが私の前に来て、私の頭にポンと手をのせ、


｢何いってんだお前。キモいな。｣


と、失礼なことを言って、珍しく私に向けて優しい顔で笑った。

ヤヨイさんが私を抱きしめながら泣く。
泣いたり笑ったり、もうぐちゃぐちゃだった。

突然、ふわっと体が傾いた。
オーナーが私の体をヤヨイさんから引き剥がしたんだ。
そして回りの様子もお構いなしにオーナーは大きな声で言う。


｢いいか！
誰にでも色んな過去があるもんだ。
だけど、こうやって支えあう仲間がいるだろ？
俺はお前達を仕事だけに留まらず、大事な仲間だと思ってる。
仲間なんだから、辛い時は頼ったっていいだろ。
忘れるなよ！絶対に！」


私にはとても感動的な言葉だった。


「っつー事で、今日は飲むぞ！ｶﾞｯﾊｯﾊ｣


いつもの調子で笑うオーナー。

どこからか拍手がおこる。
ハッとして見まわせば、お店に来ていたお客さん達が立ち上がり拍手をしていた。

そんなに広いお店ではないから、他のお客さんにも聞こえて当然だった。
加えてオーナーの声は大きい。

マスターに迷惑かけてしまったかと、カウンターに目を向ける。
目が合ったマスターはとてもにこやかに頷いてくれた。

カウンターに座っているお客さんが、

「何があったか分かんないけどさ、あんた幸せ者だね～！
あの人、あんたの上司でしょ？羨ましいよ！」

と、私を見て言った。

私は幸せ者…？
私は幸せでいいの？


「そんな顔すんなって。
お前は幸せになっていいんじゃねーの。
みんなお前に幸せになって欲しいと思ってるんだから。
ほら、分かるだろ？」


横で見ていたマコトがみんなを見渡しながら言った。
私のあんな話を聞いてもみんなが笑顔で私を見て優しい言葉をかけてくれる。
マコトの言葉に頷いた。また涙が出た。


「ますますキモいな！泣くなよ！も～！」


私は幸せだ。
みんなに会えてよかった。
あの時オーナーに…、…ケンジさんに拾われなかったら私はどうなっていただろう。