もし、あの時ケイスケとやり直していたら、今も私はケイスケと一緒だったのだろうか。
ちゃんと距離を縮める事が出来ていたんだろうか。


「まぁ、本当今さらだけどな。こんなこと言っても。」

「そう…ですね。
後悔しても、もう彼との距離は縮まらない。
余計に距離はひらいてしまったんですよね。
私が自分でそうした。」


結局私は自分で自分を苦しめてただけだったなんて。
ケイスケのためになんて何もなっていなかったかもしれない。楽になんてしてあげられていなかった。

情けなくて涙が勝手に溢れる。
7年間も何してたんだろう。
分かってるつもりだった。
でも、何にも分かってなかった。


「でもよ、アカリ。
俺たちは違うだろ?
俺たちはこれから取り戻せるだろ。
俺たちとの距離は縮められるだろ。
ケイスケの代わりにはなれねぇけどよ。」


…私は、嫌われても仕方ない話しをした。
まさか、こんな風に言ってもらえるなんて思わなかった。

でも、私は…。


「私は、みんなに嘘の自分しか見せないで裏切ってきたのに…。
みんなにどんな顔して謝ればいいのかわかんない…!」


思わず、感情が溢れ出す。
情けなくて顔を上げていられなかった。
うつむくと、ふいに頭をガシガシと撫でられる感覚がして目線をゆっくり上げると、とても穏やかな表情のオーナーと目があった。


「アカリ、知ってたか?
ここんとこ様子がおかしいってあいつら心配してたんたぞ。
毎日入れ替わり立ち代わりにみんな俺に言いに来るんだよ。
みんなお前の事好きだからな!ほっとけないんだろ。」

「うそ…。
でも…、こんな話しみんなにしたらきっと…!」


みんなが優しくて、自分がとても惨めだった。
恥ずかしさと、嫌われるんじゃないかという恐怖。
覚悟してたつもりなのに。


「悩みなんて誰にだってあるだろ!
俺はお前の全部が嘘だったとは思ってない。
客に向けた笑顔も、俺たちとのバカ話にゲラゲラ笑うお前も、あいつらの相談を真剣に聞いてやるお前も、全部お前だろ!」


私の肩を掴む手と力強い視線にビクッとなる。


「確かにお前は自分のことを話したがらないのは気づいてた。
でも、今の話をあいつらが聞いたってお前に裏切られてたなんて思うやつ一人もいねぇよ。
信じろ!分かるだろ?
あいつらバカだけど、人の気持ちが分かんないような奴らじゃないことお前も知ってるだろ!」


みんなの顔が浮かぶ。
溢れだしたものを止めることができずに、私は声をあげて泣いてしまった。

こんなバカな私を受け入れてくれた。
真剣に話をしてくれた。
オーナーの優しさが胸にしみる。
私はみんなに支えられていたんだ。