「お前は7年も自分の罪から逃げてたんだよ。
苦しんだだろうし、罰を受けてたつもりかもしれないけど、違うな。
お前は、逃げてただけだ。」


この時は、まだそんなことに気づいてなかった私。
逃げるなんてそんなつもりはなかった。
彼のためにって諦めたつもりで…、そう思っていたから。


「過ちは誰にでもあるんだよ。俺だって間違いだらけだ。
でも、それから逃げるようなことはしたらダメだろ。」


どうすれば良かったの?
あの時の決断は間違いなの?
わかんない。


「お前がそのケイスケっていう男の為だと思って別れてから、そいつどんな気持ちだっただろうな?
辛かったって事は簡単に想像できるよな。
当時の電話の様子からしても、お前を忘れられず苦しんだんだろうな。
お前は、その苦しむ姿を知ってるか?」


ケイスケが苦しむ姿…?
見てない。
そんなの見れない。

でも、もしかしたら。
確かに…そうだったのかもしれない。
あの3ヵ月後の電話では辛そうだった。
少なくともケイスケはその間苦しんでたんだ。

私は首を振って答えた。
その姿を私は知らない。


「お前は誰に責められる事なく、嫌なものを見ることなくキレイ事言って逃げたんだよ。
好きな女に突然去られて、そんな簡単に幸せになんてなれねぇよな。」


オーナーの言う通りだ。
この7年、私は自分ばかり辛い気になっていた。
ケイスケがどんな想いでいたのか分からない。
私のことなんかすぐに忘れて幸せになってると思っていた。


「今さらだし、余計なお世話だけどよ、お前達の間には家の距離よりも深刻な見えない心の距離があったんじゃねぇの?
素直に甘えられなかったのはそのせいだろ?
変に気をつかってたんだろ、お前は。」


「……そう、かも…。」


あぁ、思い出した。

彼は嫌なことがあるとケイスケはよく怒って「もう別れる」が口癖のように言っていた。
そのたび、謝るのは私。

少しすればもとの彼に戻るけど、「別れる」って言われる事が怖かった。