「誰よッ、こんなふざけた手紙をよこしたのは!」

 下校時刻の夕闇が迫るなか、校内の靴箱の前でわたしは絶叫した。
 生まれること早16年。
 恋愛の”れ”の字もしたことがない私に届いていたのは、ラブレター……のように思える挑戦状。

『俺は柳瀬さんのことが好きです。あなたに告白をしたいので、俺を探してください』

 とんでもない手紙が入っていたものだ。

 差出人の名前など、もちろんない。
 手紙を全て調べたが、間違いなく柳瀬ゆうか、わたし宛て。
 怒りに思わず手紙を、ぐしゃりと握りつぶすとこだった。

「新しいタイプのいたずら……? 許さない、犯人を絶対に調べてやるから……!」

 そして、この手紙を突きつけ――るどころか、叩きつけて、全力でお断りしてやるんだからと決意する。
 カバンを持ち、怒り心頭で学校を飛び出した。

 この時わたしの背後に、覗き見る誰かがいたなんて――
 当然ながら、知る由もなかった。

*****

 翌日、ホームルームの時間帯。
 ひっそりとカバンから取り出した手紙を調べることにした。

 真っ白な紙に丁寧な文字。黒いボールペンできちんと書かれている。
 まずはこの手紙に似た文字を書く人を探そう。
 
 筆跡から探し当てれば、難しくないはず……と思っていたけれども。

 男子の文字なのかな……? と思うほど丁寧な文字。
 いや、”俺”って書いてあるから、字面通りなら男子なんだろうけど。
 
 腕を組み、筆跡をたどる最速手段は? と、ひとり思案する。

――ひとまず図書室だ。

 本を借りるときに、名前を書く。
 入室者も退室者も、時間を記載する用紙がある。
 それを見れば、たやすいのでは?

 似ている、と思しき文字を書いた人物を数人……仮でリストアップした。

――お次は靴箱だ。
 
 最初からそうすればよかったのだが、いたらなかった。
 そもそも、靴箱のそれぞれの名前は手書きになっている。
 原則自分で書いているはずだ。
 これも筆跡が似た人物を絞り込んでみる。

 そして、放課後にはとうとう5人に絞り込むことができた。

 中村翔太、石田学、小西涼介、高橋優斗、そしてクラスメイトの立花大樹。
 立花くん以外は、関わったことがない人物ばかり。
 唯一のクラスメイトの彼ですら、え? 話したっけという程度。
 思い出せる顔はぼんやりと。

 さあ、ここからが本題だ。

 文字が似ている、というだけで本人が出したかどうかはわからない。
 最終的に『この差出人は俺だ』ってどうやって――。

 ならばどうしようか。
 ……そうだ。
 つまり本人に自白、させればいいのだ。

 思わずにやりと口元が緩む。
 そして、私は行動に移した。