信号が赤に変わり立ち止まる。
平然とした顔の車の運転手が目の前を通り過ぎて行った。
一秒が一時間に感じられる。
信号が永遠に青にならないんじゃないかという気さえしてきた。
やっと変わった信号を全力で走り抜ける。
通行人が驚いた顔をして避けていく。
誰かにぶつかったけど構わず走る。
今は友香の安全を早く確かめたい一心だった。
汗が目に入り、涙となって零れ落ちる。
風太と合流して病院に辿り着いた頃には辺りは真っ暗になり、水面に映る三日月だけが怪しく揺れ動いていた。
あがった息もそのままに受付に向かう。
額を拭いながら風太が聞いた。
「雪乃は?!」
「申し訳ありません。ただいま面会時間外となっております」
「ちげぇよ! 雪乃がいねぇって電話かけてきたのはそっちだろ。雪乃は見つかったんかって聞いてんの!」
高圧的な風太の口調に、奥で作業をしていた人が肩を震わせた。
「ご家族様ですか? 気づかずに申し訳ありませんでした」
「建前なんてどーでもいいんだよ。それより雪乃は? いたのかいないのか答えろ」
「病院中、中庭から屋上まで探しましたが、どこにもいませんでした」
「どこにも!? …ったく。雪乃のやつどこ行ったんだよ!」
風太の大声に正面から来た看護師が、すれ違い様に迷惑そうな視線を向けた。
一度頭を下げてから風太を引っ張り、外に探しに行くことにした。
雪乃ちゃんが行きたいと言っていた場所。
友香が行きそうな場所。
二人がよく遊びに行っていた場所。
手分けして、心当たりある場所は隈無く探した。



