(あーあ。ほんと健斗いなくなったらどうしよう)

「え?」

驚いた健斗の表情を見て、私の酔いも一気に冷めてくる。

(いま……もしかして口に出てた?)

健斗が真面目な顔をして私のベッドに腰掛ける。

「あのさー……」

なんとなく聞く勇気のない言葉を想像して心臓が駆け足になる。

「いま彩、だいぶ酔ってるよね?」

「……あー、うん。もし……らしくないコト言ってても明日には忘れてるから」

「だろうね……じゃあ俺もらしくないコト言っとこうかな」

健斗は長い足を組むと唇を湿らせた。
健斗が話を始めるときにするクセで、形のいい唇が僅かに濡れる様がいつからか色っぽいと思うようになった。

「俺さ、彩が姉貴になってくれて良かったなって思ってる……」

「うん……」

一つ屋根の下で男女が二人きり……さっき頭に描いたシチュエーションが不意に蘇ってきて私は変な汗までかいてくる。