現実はこんなもんだ。健斗は私を彩と呼んだり姉貴と呼んだりするが健斗にとってそれに意味はない。

健斗にとって私は姉。

そして私にとって健斗は弟。
それでいい。それが一番いい。

星の数ほどいる男の中でどうして私は健斗に恋したんだろう。

健斗が2階への階段を登り切ると半開きだった私の部屋の扉を足で開ける。  

「はい、彩の部屋着いた」

健斗が私をベッドに寝かせるとベッド脇に私の鞄を置く。そして慣れた手つきで私のスマホを操作する。ロックの解除は私の誕生日。

「明日何時に起きる?」

「13時」

「寝過ぎ。11時にセットしとく。昼飯作るから」

「じゃあ聞かないでよ」

いつだって酒に酔った私を介抱してくれるのは健斗だ。でも一度もお礼は言えてない。

どうして素直にありがとうって、あの子みたいに可愛く笑って言えないかな。

私の口から出てくるのは見た目同様、あの子とは正反対のトゲトゲした言葉だらけだ。