あれ以来僕は、彼女が気になって仕方がなかった。

窓際の席で1人外を眺める葉月をこっそり見つめる。いつも通りの穏やかで柔らかい表情で空を見つめている。時折、話しかけに来る女子たちに明るく何かを返す。そしてまた空を見つめる。
 


ーそして、ふと目が合った。咄嗟に目を逸らしたけど、ついまた葉月の方を見てしまう。葉月はまだ真っ直ぐに僕の方を見つめていて意地悪く笑った。そして口パクで『また見てる』と言った。
なんか恥ずかしくて『見てないし』と返す。

そんな僕をまた意地悪く笑って葉月はそっと目を逸らした。

…その瞳は、どこか寂しげで切なく揺れていた。


この前とは違うけど、寂しそうな瞳。僕は思った。葉月はいつか、僕の前から消えてしまうのではないだろうか、と。
もちろん一生一緒にいれるとなんて思ってはいない。でも、彼女との別れは僕が思うよりもうんと早いのではないか、そう思わせる瞳だった。


「…葉月」
気づけばそう呟いていた。誰にも聞こえないくらい、小さな小さな声で。


葉月…ねぇ、葉月。君は、僕の側からいなくなってしまうのだろうか。
それも、僕が思ってるよりうんと早いうちに。