「林野~」
この一声で、総務部の女子は皆、声の主の方へ顔を向ける。
対して私―――林野 ゆめはデスクに顔を向けたまま。
「相変わらずイケメンよね~」「素敵~」「眩しいっ…!」
などと褒めちぎられている。
「これ、見積書。取引先に郵便で送っといて」
「速達?」
「普通で」
「り」
資料を受け取り、早く自分の部署へ戻るよう、促す。
「いいじゃん、俺のタイミングで帰らせてよ、ゆめ」
「社内で下の名前で呼ぶな」
早く帰れ、というと、ちえ、と言いながら部署へ戻っていった。
「ゆめ先輩、何で早く帰らせたんですかぁ?」
目の保養なのにぃ、と私の後輩。
「業務の邪魔だし、私は業務をさっさと済ませて早く定時で帰りたい」
「でも、癒しは欲しいじゃないですかぁ、実は狙ってるしぃ」
「諦めな、あいつはセフレが3人くらいいるよ」
私の同期―――森 結人は知る人ぞ知る"遊び人"である。
基本的に彼女は作らず、代わりにセフレが途切れない。
そうしないと"生きていけない"そうだ。とんだ変態野郎だ。
「でも、そこも魅力的っていうか~」
「あ、ああ…そうなのね」
ちょっと休憩してくる、と私は席を立ち、お気に入りの場所へ向かう。
*
「セフレ…ねぇ」
もうどのくらいセックスしていないだろう。
雲一つない真っ青な空を見上げ、卑猥なことを考える。
「いち、に…3年もしてない」
そりゃそうだ。
―――大学の時の彼氏が最後だからだ。
「何一人で呟いてんの」
「げ…森」
「"げ"って何だよ。どんだけ俺の事嫌いなんだよ」
「それなりに」
「まあ、いいんだけど。何が"3年"もしてないんだよ」
「…セックス」
「まだ午前中ですけど林野さん」
「なんかねー、ふと思えば、3年してないなーって」
そういうと、森は、
「俺、半年でも死にかけるのに3年とかまじ論外、死ぬわ」
「どんだけ絶倫なんだよ」
「それなりに」
ふぅっと息を吐く森。
なんだか、いつもより少し息が荒い気がしている。
のは、気のせい?
「森、熱ない?」
そういうと、森は、
「やっぱりゆめには隠せないな」
そういうと、森は静かに私の方へ倒れ、
「ちょっとこのままでいさせて」
森は私に体重を預けた。
森の体温が私の触れている部分を熱くさせる。
次第にその面積は広がり、全体重が私の腕にのしかかってきた。
「森?…森!」
森は、意識を失っていた。
*
「ただの寝不足ね」
医務室にいた保健師がそう言った。
「営業成績がトップだからそのプレッシャーかな」
「森にそんなプレッシャーを感じることがあるんですか」
「森君にまあまあ失礼ね。まあ、いいわ。私ちょっと出るわね」
そういった保健師は背伸びをしながら医務室から姿を消した。
ベッドですやすや眠る森。
間近で見る森の顔は端麗で、誰が見てもイケメンだろう。
そんな森の寝顔を誰もが見たいと思うだろう。
「うぅ…ここは?」
「医務室。森が急に倒れたから、連れてきてあげた」
「保健師は?」
「いない」
「―――好都合」
「え?きゃっ―――!」
森に抱かれ、すぐにベッドに押し倒される。
「ほんとはゆめとはこんな形でしたくないが―――俺の為に許してくれ」
そういうと、森の唇が私の唇と重なる。
「―――ん!んっ…!はぁ……!」
舌が侵入し、私の舌と絡み合う。
この感じが久しぶりでなんと表現したらいいか―――
気づくと、森はキスをやめ、
「ありがとう、少しは元気になった。また会社終わりによろしく」
「え?」
「今度はもちろん―――それ以上だ」
と言ってきた。
*
それ以上、ってどういうこと?
え?私さっきまで―――
森と……キス?
「はぁ?」
頭の中が整理できない。
「ゆめ先輩、何かあったんですか……?」
横にいた私の後輩が、心配そうに聞いてきた。
「いや、何も……」
「林野ー」
瞬く間に再登場してきた森。
「何ですか」
「うわ、怖。ごめん、これ別の取引先だけど、また同じ感じでよろしく」
資料をサッと取り、帰れのオーラを放つ。
「森先輩、ゆめ先輩に何かしましたね?」
「俺?うーん、何かしたっけなー」
「しらばっくれるな!いいからとっとと自分の部署へ戻れ!」
「うっわ、まじ怖。では、退散しますかね」
私の怒りをそっちのけに通常運転で自分の部署に戻る森。
…お前が私にしたこと、忘れさせねぇからな?
この一声で、総務部の女子は皆、声の主の方へ顔を向ける。
対して私―――林野 ゆめはデスクに顔を向けたまま。
「相変わらずイケメンよね~」「素敵~」「眩しいっ…!」
などと褒めちぎられている。
「これ、見積書。取引先に郵便で送っといて」
「速達?」
「普通で」
「り」
資料を受け取り、早く自分の部署へ戻るよう、促す。
「いいじゃん、俺のタイミングで帰らせてよ、ゆめ」
「社内で下の名前で呼ぶな」
早く帰れ、というと、ちえ、と言いながら部署へ戻っていった。
「ゆめ先輩、何で早く帰らせたんですかぁ?」
目の保養なのにぃ、と私の後輩。
「業務の邪魔だし、私は業務をさっさと済ませて早く定時で帰りたい」
「でも、癒しは欲しいじゃないですかぁ、実は狙ってるしぃ」
「諦めな、あいつはセフレが3人くらいいるよ」
私の同期―――森 結人は知る人ぞ知る"遊び人"である。
基本的に彼女は作らず、代わりにセフレが途切れない。
そうしないと"生きていけない"そうだ。とんだ変態野郎だ。
「でも、そこも魅力的っていうか~」
「あ、ああ…そうなのね」
ちょっと休憩してくる、と私は席を立ち、お気に入りの場所へ向かう。
*
「セフレ…ねぇ」
もうどのくらいセックスしていないだろう。
雲一つない真っ青な空を見上げ、卑猥なことを考える。
「いち、に…3年もしてない」
そりゃそうだ。
―――大学の時の彼氏が最後だからだ。
「何一人で呟いてんの」
「げ…森」
「"げ"って何だよ。どんだけ俺の事嫌いなんだよ」
「それなりに」
「まあ、いいんだけど。何が"3年"もしてないんだよ」
「…セックス」
「まだ午前中ですけど林野さん」
「なんかねー、ふと思えば、3年してないなーって」
そういうと、森は、
「俺、半年でも死にかけるのに3年とかまじ論外、死ぬわ」
「どんだけ絶倫なんだよ」
「それなりに」
ふぅっと息を吐く森。
なんだか、いつもより少し息が荒い気がしている。
のは、気のせい?
「森、熱ない?」
そういうと、森は、
「やっぱりゆめには隠せないな」
そういうと、森は静かに私の方へ倒れ、
「ちょっとこのままでいさせて」
森は私に体重を預けた。
森の体温が私の触れている部分を熱くさせる。
次第にその面積は広がり、全体重が私の腕にのしかかってきた。
「森?…森!」
森は、意識を失っていた。
*
「ただの寝不足ね」
医務室にいた保健師がそう言った。
「営業成績がトップだからそのプレッシャーかな」
「森にそんなプレッシャーを感じることがあるんですか」
「森君にまあまあ失礼ね。まあ、いいわ。私ちょっと出るわね」
そういった保健師は背伸びをしながら医務室から姿を消した。
ベッドですやすや眠る森。
間近で見る森の顔は端麗で、誰が見てもイケメンだろう。
そんな森の寝顔を誰もが見たいと思うだろう。
「うぅ…ここは?」
「医務室。森が急に倒れたから、連れてきてあげた」
「保健師は?」
「いない」
「―――好都合」
「え?きゃっ―――!」
森に抱かれ、すぐにベッドに押し倒される。
「ほんとはゆめとはこんな形でしたくないが―――俺の為に許してくれ」
そういうと、森の唇が私の唇と重なる。
「―――ん!んっ…!はぁ……!」
舌が侵入し、私の舌と絡み合う。
この感じが久しぶりでなんと表現したらいいか―――
気づくと、森はキスをやめ、
「ありがとう、少しは元気になった。また会社終わりによろしく」
「え?」
「今度はもちろん―――それ以上だ」
と言ってきた。
*
それ以上、ってどういうこと?
え?私さっきまで―――
森と……キス?
「はぁ?」
頭の中が整理できない。
「ゆめ先輩、何かあったんですか……?」
横にいた私の後輩が、心配そうに聞いてきた。
「いや、何も……」
「林野ー」
瞬く間に再登場してきた森。
「何ですか」
「うわ、怖。ごめん、これ別の取引先だけど、また同じ感じでよろしく」
資料をサッと取り、帰れのオーラを放つ。
「森先輩、ゆめ先輩に何かしましたね?」
「俺?うーん、何かしたっけなー」
「しらばっくれるな!いいからとっとと自分の部署へ戻れ!」
「うっわ、まじ怖。では、退散しますかね」
私の怒りをそっちのけに通常運転で自分の部署に戻る森。
…お前が私にしたこと、忘れさせねぇからな?
