その後、新規のオーダーを手伝いつつ、再び店舗全体を見回す。店内は満席に近いものの新規の来店はまばらとなり、ランチタイムのピークは過ぎ去ったようだ。
パントリー台を拭いていると、「やー、すいません。どうしても我慢できなくて四番行ってました」と辻村が戻ってきた。四番というのはトイレの隠語で、どうやら今日は彼が葛西のトレーナーらしい。
「まじごめん、葛西さん。大丈夫だった?」
「はい。佐伯マネージャーが手伝ってくださったので」
「あっ、そうなんすね。佐伯マネもありがとうございました」
「ううん。それにしても辻村くん、もうトレーナーになってるんだね」
辻村は二十四歳の男性で、美咲がエリアマネージャーになってからこの店でバイトを始めている。バンドをしているらしく、派手でチャラそうな見かけをしているけれど、物覚えが早くて要領がいい。まだ一年しか経っていないものの、ここ数日の働きぶりは頼もしい限りだった。
「今日はたまたまベテラン勢が少なくって。普段はあんましないっすよ」
「でも店長も褒めてたよ。辻村くんがいる日はチームワークもいいし、シフトもたくさん入ってくれるから助かるって」
お調子者でムードメーカーの彼は、店舗を円滑に運営するにはとてもありがたい人材だ。



