ぶんぶん首を振る美咲に対し、てっきり猛烈に反対すると思っていた篤志が「いいんじゃないか」と大翔の提案に頷いた。
「ひとり暮らしするにも、部屋なんてそう簡単には見つからないだろ。その間、大翔と一緒なら安心だ」
「えっ? 私、少しの間お兄ちゃんの部屋に置いてもらうつもりで……」
「あぁ、そうしてやりたいんだけど……実は、少し前から付き合ってる女性がいるんだ。もう何度か部屋にも呼んでて彼女の荷物も置いてるから、悪いけどそう何日も泊めてやれない」
早口で言い切る兄の顔をじっと見つめる。
(お兄ちゃんに、付き合ってる女性が……)
篤志は父親似の切れ長な目が印象的な顔立ちで、妹の美咲から見ても整った容姿をしている。
実際に小学校高学年の頃には女の子たちから絶大な人気があったし、過去には彼女がいた時期があるのも知っている。
けれど父が亡くなってからは、兄が女性と付き合っている素振りを見せたことは一度もない。美咲はそれを自分が頼りないせいなのではと、ずっと気に病んでいた。



