金縛りにあったかのように身動きがとれなくなっていると、後ろから聞き慣れた声がした。
「大翔……と、美咲か?」
振り返ると、キャリーケースを引きながらこちらに歩いてくる篤志が、眉間に深いシワを寄せている。
「お、おかえりなさい、お兄ちゃん。国際線乗務だったんだね」
「あぁ、ただいま。それよりどうしたんだ。なにかあったのか?」
「……うん、まぁ」
結婚を視野に入れて同棲すると決め、『本当にいいのか』『後悔しないのか』とずっと心配してくれていたのを押し切って兄のマンションを出たのは半年前。
こんなにも早く出戻ってくるなんて不審に思われてしまうだろうし、浮気されたのだと知れば悠輔のマンションに乗り込んでいきそうな気がする。
あまり心配をかけないためにはどう伝えるべきか悩んで言い淀んでいると、大翔が助け舟を出してくれた。



