相手の女性が『なかなか振り向いてくれない彼女』と言っていたが、あれは美咲について悠輔が漏らした本音なのだろう。
美咲は信頼という絆で結ばれた夫婦になりたいと思っていたけれど、彼は物足りなさを感じていたのかもしれない。
しん、とあたりを静寂が包む。
大きく息を吐き出して、美咲は「一年間、ありがとう」と告げた。それが、ふたりの交際に幕を下ろす合図となる。
それに対して悠輔はなんの反応も返さないまま、踵を返してその場をあとにした。
彼の背中が見えなくなるまで見送ると、こわばっていた身体から力が抜ける。
(私って、恋愛とか結婚に向いてないのかも……)
好きになりすぎれば相手を困らせるほどに嫉妬をして、苦しさに身動きが取れなくなる。かといって冷静に結婚を見据えてみても、相手との気持ちの温度差に気付けずに失敗した。
悠輔の浮気を知って、パートナーとして信頼を裏切られたショックはあったけれど、嫉妬して苦しくてどうしようもないという感情は湧いてこなかった。



