「海外では珍しくない制度だけど、日本ではここ数年でようやく取り入れられたんだ。会社としては柔軟なシフトが組めるから運行の幅が広がるし、俺たちパイロットはそれぞれの機種で経験を積んで多くの種類の航路を運行できる。そういう未来を作りたいというサクラ航空のビジョンに共感したから戻ってきたんだ」
瞳を輝かせて今後の航空業界の展望を語る姿は、学生の頃に美咲の父の話を聞きに来ていた大学生の頃のままだ。
「っと、ごめん。つまらない話だったな」
「いえ。大翔さんは今後の航空業界を担う優秀なパイロットになったんですね」
「優秀かどうかはわからないけど、一度海外に出たおかげで年齢のわりには経験を積めたとは思うよ」
ハンドルを握りながらそう言う彼は、自信と余裕に満ちて泰然としている。八年前よりも格段に磨かれた男ぶりに、トクントクンと胸がどうしようもなく高鳴るのを感じた。
(なにを考えてるの、悠輔と別れたばかりなのに。それに八年前のことを考えたら、もう大翔さんとどうにかなるなんてあり得ない)
美咲は何食わぬ顔で彼の話に頷きながら、視線をそっと正面に移した。
それから十五分ほどでマンションに到着した。大翔は車寄せに停車し、出迎えてくれたコンシェルジュの男性に駐車場へ運んでもらうよう頼んでいる。



