「すみません。昨日私が取り乱したせいで気を遣わせてしまって」
同棲中の恋人に裏切られた美咲に同情してここまでしてくれたのだろうが、もう十分だ。
「本当に、私は大丈夫ですから」
強がりではなく本心から笑顔でそう伝えると、大翔はこちらを見つめたまま息をのんだ。
「……びっくりするほど大人になったな」
「八年、経ちましたから」
彼と付き合い始めた当時、美咲は十九歳だった。父や兄に過保護に育てられたのもあって、実年齢以上に幼く世間知らずだったと思う。
「あの頃の私は、きっとものすごく子供でしたよね。今更ですけど、本当にすみませんでした」
当時は自分もいっぱいいっぱいだったとはいえ、なんの非もない彼に一方的に別れを突きつけ、連絡をすべてシャットアウトした。一年間に渡る交際を終わらせる手段としては、非常識極まりない。



