それに、たしかに兄は過保護だけれど、あんな風に大量の服を買い与えたりはしない。
「それに頼ると言っても、数日泊めてもらうつもりだっただけです。できればその間にひとり暮らしのマンションを探したくて」
「ひとり暮らし? どうせ同じ都内で働くのに別々に暮らす必要はないって、篤志は反対すると思うけど」
「う……私も兄ならそう言う気がしますけど。だからって、この先もずっと一緒に住んでたら恋人ができた時に困るじゃないですか」
「……恋人、ね」
これまでずっと笑顔で楽しそうだった大翔の表情がすっと抜け落ち、先ほどよりも声がワントーン低くなる。
それを不思議に思いながらも、美咲は自分の気持ちを言い募った。
「兄が過保護なのは、きっと私が頼りなく見えるせいだと思うんです。子供の頃はともかく、私も今は一応社会人六年目のアラサーですから。ひとり暮らしだってきちんとできますし、あれこれ買ってもらわなくても自分で支払えるくらいには稼いでます」
ずっと自分に自信がほしかった。
平凡な容姿は変えられないし、急に自己肯定感が上がるわけでもない。
だからこそ自立した女性になりたくて必死に仕事に邁進してきたおかげで、入社四年目にはエリアマネージャーへと昇格し、給与も少しだがアップした。
仕事は楽しいし、人間関係も昨夜の悠輔との一件を除けば概ね良好だ。心配してくれるのは嬉しいけれど、もう自分は子供ではない。



