もう少し強く主張すれば彼も話を聞いてくれたのかもしれないけれど、結局は足りないものだけを買い足して、バラバラの茶碗やマグカップを使っていた。
それに不満があったわけではないけれど、やはりこうして食器を選んでいると心が踊る。きっと毎日の食卓をさりげなく彩ってくれていた母のように、自分も理想の空間を作ってみたいと望んでいるからなのかもしれない。
「へぇ。淡めの色合いだけじゃなくて、ブラックとかブラウンもあるのか。なんか新鮮だな」
「あっ! でも大翔さんのおうちのお皿は白で統一されてましたよね。それならあっちの――」
まるで自分の家の食器を選ぶような気分でいたけれど、これは大翔の買い物なのだ。
ハッとして別のブランドの食器を見ようとしたけれど、彼は首を横に振った。
「いや、これにする」
大翔はそう言うと、美咲が憧れていると話した北欧食器のブランドで様々な種類のプレートを買い揃えた。
(私の意見を聞いて決めちゃったけど、本当にいいのかな? しかも全部ふたつずつって……これから誰かと暮らし始める準備みたい)
昨夜、大翔は『心配しなくても、美咲が思っているような相手はいない』と言っていたけれど、これではまるで同棲や結婚準備のようだ。
疑問に感じて隣を歩く大翔を見上げるが、彼は満足そうに微笑んでいた。



