過去は過去。そう割り切れるような大人の女性ならばよかった。けれど恋愛初心者の美咲にとって、元カノの存在は脅威そのものだった。
子供っぽいと幻滅されたくなくて不安な気持ちを素直に打ち明けられなかったし、大翔の元恋人であり、よき仲間として働いている彼女を悪く言うのが躊躇われたのもある。
それでも当時は、美咲なりに精一杯考えて出した答えだった。
大翔は納得していない様子だったけれど、数日後には訓練のため同期たちとともにアメリカへと飛び立った。そのタイミングで別れ話をしたのも卑怯だったと思う。
何度も電話やメッセージが来たけれど、すべて拒絶した。スマホは解約して新しいものを購入し、番号もアドレスもすべて一新。SNSもすべてのアカウントを削除するなど、徹底的に大翔との接触を絶った。
そこまでして彼を忘れようとしたにもかかわらず、大翔は美咲の心からいなくなってはくれなかった。青い空に飛行機を見つけるたびに、彼のことを思い出してしまう。
そして、失恋にふさぎ込む美咲にさらなる絶望が襲いかかった。
十年前に最愛の妻を亡くし、男手ひとつで篤志と美咲を育ててくれた父が、不慮の事故で亡くなったのだ。



