いたずらっぽく笑う大翔に、美咲は慌てて首を振った。
彼が紳士であることは十分知っている。八年前もそうだし、今だって慰めを口実に言葉巧みに寝室へ連れ込もうと思えばできてしまう環境だ。
それでも彼は、ただ黙って抱きしめてくれただけだった。その優しい安心感に、心がぐらりと揺れる。
元々雨に濡れていた上、散々泣いたせいでメイクはボロボロに剥げているだろう。
そんな状態で再び外に出て、ホテルの空きを探して彷徨う自分の姿を想像すると、彼のありがたい提案に甘えてしまいたくなる。
今日だけ、と何度も自分に言い聞かせ、美咲はおずおずと申し出た。
「あの……今日だけ、お言葉に甘えてもいいですか?」
「もちろん。色々準備するから、できるだけゆっくり入ってきて」
嬉しそうに頷く大翔に促されるままバスルームへ向かった。
案の定ボロボロだったメイクをクレンジングシートで落とし、頭から温かいシャワーを浴びる。



