「美咲……」
「そういう訳で、泊まるところを探さないといけないんです。さすがに彼が他の女性と過ごした部屋には帰れません」
笑い飛ばしたかったのに、弱々しい声しか出ないのが情けなさを助長する。
涙を堪えすぎると喉が痛くなるのだと痛感したのは八年ぶりだった。
「無理して笑わなくていい」
大翔はそう言うと、美咲を自分の方に抱き寄せた。咄嗟になんの反応もできず、そのまま彼の胸に顔を埋める格好になる。
「言いたくないことを無理に言わせて悪かった。そんな男のことは忘れて、今日はここでゆっくり休めばいい」
「ここで、って……」
「家に帰れないから泊まる場所を探してるんだろう。それならうちに泊まればいい」
「そんなことっ」
できるわけがない。そう続けようと顔を上げた瞬間、「くしゅんっ」と最悪のタイミングでくしゃみが出た。
「ほら、このままだと風邪をひく」
「本当に大丈夫なので」
やはり心配させてしまったと内心で焦る。
なんとか彼の腕の中から抜け出そうともがくが、より強く抱きしめられた。



