唇を噛みしめて俯いたものの、大翔が引く様子はない。
今日は金曜日で、明日から祝日と合わせて三連休だ。あまりのんびりしていては、ホテルの部屋が取れなくなってしまう。
「美咲」
大好きだった声でもう一度ゆっくりと名前を呼ばれ、観念して口を開いた。
「……兄の言っていた通り、恋人と一緒に暮らしていたんですが、さっき家に帰ったら彼が女性を家に上げていて。明らかに、その……」
その続きは言葉が出なかった。
上半身裸で玄関先に出てきた悠輔の姿を思い出すと、悲しみと不快さで喉の奥が締めつけられる。
これ以上は口にしたくないという思いから、ちらりと上目遣いに大翔の表情を窺う。すると彼はぐっと眉間に皺を寄せて、先程よりもさらに険しい顔をしていた。
「まさか、浮気現場に遭遇したってことか?」
「……はい」



