美咲は躊躇いつつ、理香から教えてもらった動画を見たのだと伝える。すると、大翔はおかしそうに笑った。
「あぁ、長嶋キャプテンの。緊迫した雰囲気の中であのPAをするなんて、さすがベテランパイロットって感じだったな。同乗していたもうひとりの機長とかCAたちに、今度詳しく聞かせてって詰め寄られたよ」
「私も、次に空港店に行ったらスタッフの子たちにめちゃくちゃからかわれそうです」
「ははっ。辻村くんだっけ? さっき店に寄ったら、レジで『今度女の子の口説き方教えて下さい』って言われたよ」
「えぇ? ったく、もう。すみません」
「いや。俺は美咲しか口説いたことがないから、他の女の子の口説き方はわからないってその場で断っておいた」
笑顔で肩を竦める大翔に絶句する。
断ったと言っているが、それは盛大な惚気でしかない。口笛を吹いて茶化す辻村と、頬を紅潮させて黄色い悲鳴を上げる葛西の様子が目に浮かぶ。
「大翔さん……!」
「ん?」
「……いえ、なんでもないです」
じろりと見上げたものの、大翔は悪びれずに微笑んだままだ。
ここでなにを言ったとしても、美咲が盛大に照れさせられる未来しか見えない。ここは深追いしないに限る……と思う。



